SS
□夏の終わりに。
1ページ/3ページ
「ニオウくん花火、キレイですよ」
「ん……」
夏の終わりを感じさせない鮮やかな火花を、その時オレたちは一緒に見ていた。
■
「花火、ですか?」
それを話すと柳生は不思議な顔つきで首をかしげた。
梅雨が明けると、本格的な夏の訪れと共に運動部の活動も最盛期になる。せっかくの夏休みもやれ練習だやれ大会だとあっという間に過ぎていき、どこにも出かけないままあと僅か…
そんな時に知った夏の終わりの花火大会。
「せっかくの夏休みにどこにも出かけんかったからな…」
そういうと意味を理解したのか途端に顔が変わる。
「では浴衣着て下さいね」
犬が尻尾を振るように満面の笑みを浮かべた。
その嬉しそうな柳生の顔を見て、オレもまた心の内だけで笑んだ。
■
なぜか連れて来られたのはホテルの一室。
浴衣と全くもって合わない洋装で、その広さと置かれている物の豪奢さから、庶民の自分が泊まることがまずないようなレベルの所だとわかる。
「ニオウくんは人混み苦手でしょう?」
呆然として無防備なオレを後ろから抱き締め耳元で囁く。
それは図星。
やけど見透かされていることがちょっと癪に障る。
「そんな、むくれなくても…ニオウくんのしたいことはしますよ」
「っ……」
耳に舌が侵入して卑猥な音を立てる。
と同時に浴衣の合わせ目から柳生の手が侵入し、薄い胸を揉む。
「…ない胸揉んで楽しいか?」
その部位は性的に感じないもののざわざわと妙な感覚が背筋を這い上がってきて行為への期待が高まる。
「楽しいですよ…ニオウくんの反応が」
ごく嬉しそうに告げる柳生の声が興奮しているのがわかり、益々体が奮えてくる。
耳と胸への愛撫だけで体の力が抜けそうになるのをなんとかこらえて、
「やぎゅっ、せめてソファに連れて行けや…っ」
強がりを言うのが精一杯だった…