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□掃除のごほうび
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12月も暮れてくると世間は一斉に大晦日ムード。新年を迎えるにあたってどこの家庭でも大掃除が行われる。それは我が家でも例外ではなくて…


「けっこういらんもん多いの」
区指定のゴミ袋をいっぱいにしながらオレはため息をつく。
普段柳生がこまめに掃除をしているからそんなに散らかってはいないが、住んでいればそれなりにいらないものは溜まっていくもので。せっかくだからいらないものは処分しようとクローゼットを開ければ結構でてくる。男二人で暮らしていてなぜこんなに物が溜まるのか不思議なほどだ。
「もうその箱で終わりなので頑張って下さいね」
はいコレ、とクローゼットの奥にある箱を取り出しオレに爽やかに渡すと柳生はさっさと風呂場の掃除に向かった。
朝から始めた大掃除も柳生の手際がいいからか正午の鐘が鳴る前にどうにか片付きそうだ。
クローゼットの一番奥に置いてあった段ボールは割りとこじんまりとしていて、
これならすぐ終わりそうだとその箱を開けた。
「おっ……」
中身を見て手が思わず止まる。
箱に入っていたのはなんとも懐かしいもの。それは中学高校時代に所属していた部活のユニフォームで。からし色が基調なのを見ると中学のだとわかる。
しかもそれはなぜか自分の名前が刺繍されていて……

―そういや柳生にやったんやったか
引退する時に柳生が物欲しそうな目で見ていたからやった記憶がある。そんな昔の物を未だにしまっているのがおかしくて自然笑顔になってしまう。
箱からユニフォームを出して広げれば当時の思い出に胸が熱くなる。
懐かしい……

今ココで柳生と一緒に住んでいるのも、考えれば中学時代に自分がテニス部に引き入れたのが原因。その時はまさかこんな年まで一緒にいることになるとは思ってなかっただろうが……
―まだ着れるかの。
懐かしさにふざけてユニフォームに着替えれば多少肩の辺りはきついが着れないこともなくて。我ながらイケてると思う。折しも箱の中にはハーフパンツもあったからそれも着替えれば、完ぺき中学時代に戻った気がする。

これを見せれば柳生はどんな顔をするか?
掃除のことなんて最早頭から消えていて、この格好を見た柳生の反応が気になる。
「掃除にもいい加減飽きたし、柳生ででも遊ぶかの」
箱の中身を一瞥してゴミらしきものがないのを確認して、その姿のまま柳生がいる風呂場に向かった。


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