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□お前に未来を託す
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高校2年ともなればおのずと進路のことを考えさせられる。将来何をしたいかなんて今の自分には全く考えつかない。考えるのも面倒だ。
ただ…
ただ、どういう道をとろうともあいつと一緒にいるだろうということは漠然ながらも確信していた。
だけど……
「進路迷ってるんですよね」
帰り道なんとなく柳生に進路について聞いてみたら柳生らしくない歯切れの悪い答えが帰ってきた。
きっかけは今日配られた進路調査票。提出まではまだ期限があるが、これによって来年のクラスがわけられるのであまりふざけて出せない所がキツい。

「意外やの。医者になるもんとばっかりおもっとった」
「まあ……確かに…そのつもりなんですが……」
本日二度目の柳生らしくない歯切れの悪い話し方に激しい違和感を覚える。
「医者は医大行かななれんぞ」
茶化してみればそうですねと笑う。けれどもその笑顔もいつもと違ってどこか影がある。
「やぎゅ…」
「そういうニオウくんはどうするおつもりなんですか?」
何かあったのかと問おうとすれば、それを遮るように自分がした質問を返された。

―誤魔化しよって……
少しイラッとしたが柳生にはその顔を見せない。
「進路なんぞ正直まっったく考えとらん」
仕方なく思ったままを口にすれば貴方らしいと柳生は笑う。
「適当に大学行って適当に就職して……」
お前と一緒におる、その言葉はなぜか言えなかった。言えば柳生は感動にむせび泣いただろう。いつもの柳生なら。いつもと違うことに不安感が募る。

―何かしたか、オレ…
表面上はいつもと同じだから周りの人間は気付いてないだろうが、自分にはわかる。伊達に付き合いは長くない。
何か柳生が嫌がることをしたかと頭をめぐらせれば、それこそ山のようにでてきて頭が痛くなる。流石にいぢめすぎたかと軽く反省すれば右手にぬくもりを感じる。見ればそこには柳生の手が繋がれている。
「オマエな……」
普段なら蹴り飛ばす所だが柳生の様子がオカシイから無下にできない…
「五分だけでいいですから」
どうかこのままで、と繋がれた手に力が込められる。その顔があまりに真剣だったので余計に不安になる。
―何かあったのか……?
聞きたくてたまらない。なのに喉がつかえて言葉にならない……
もどかしくて、不安でたまらなくて。ナニカに離されないようにしっかりと柳生の手を握った。
結局五分どころか、分かれ道に来るまで手は繋ぎっぱなしだった。いくら日が暮れていたとはいえ誰が見ているかわからない公共の道で、男同士で手を繋いで帰るなんて……我ながら相当動揺していたらしい。


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