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□oyup
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「はい、仁王くん誕生日プレゼントです」
そう言って柳生から渡されたのは何かの鍵だった…いや、何かは検討がつく。なぜならその鍵にはホンダのエンブレムが刻まれていたから。
「お前…オレが前に言ったこと覚えてるか…」
こんな高価な物をもらえないと遠回しに言うが、柳生はドコ吹く風。早く物を見せたいのかソワソワしている。
仕方ないか…とりあえず実物を見ようと外に出て再び唖然とした。「おまっ…よりによってこれかい…」
柳生がニコニコしながら見せた「誕生日プレゼント」に驚きを超越して言葉につまる。
まるっとしたフォルム。車にあるまじきプニプニのボディ。まるでオープンカーのように開放感が溢れているたっぷりとした窓。
それは学生の頃に行ったモーターショーで未来カーとして紹介されていたもの。
「ようやく発売されると聞いたもので思わず買ってしまいました」
限定なので大変でしたとか言いながらなんとも言えん笑顔で車体を撫でる柳生。その顔を見てると、いくらオレでもいらんとは言えんくなった。
「にしてもえらい可愛い車にしたんじゃの」
柳生の趣味から大きく外れていることが明白なこの車。車にはうるさい柳生がこういうのを選んだのがオレには意外やった。
「二人で楽しめる車がいいと思いましてね」
二人での部分を強調し、にっこり笑う柳生。
「これ二人で楽しめる車なんか?」
どう見てもオレらの理想の車から逸脱してるこれが?オレが不思議な顔をしていると柳生はオレの手にあった鍵を取り車のドアを開けた。
「とりあえずドライブしませんか。使ってみればよさがわかりますよ」
「…もう日も暮れとるのにか」
「明日は休みですから問題ないでしょう?」
いつも夜中までDVD見てるくせに、と言われれば返す言葉もなかった。
仕方なく助手席に乗り込む。ドアの開く方向すら従来のものと違っていて流石未来カーとどうでもいい所で感心する。内部は車の中とは思えないほど広々とした空間が広がる。運転席には本来あるはずのハンドルがなく、スピードを示すパネルがあるのみ。ハンドルは、運転席の窓側にジョイスティックとしてある。
「こんなんでよう運転できるな…」
「慣れれば多分こちらの方が便利かと思いますよ」
オレを乗せる前に練習したのか、柳生は慣れた手つきで運転する。
別に惚れ直したりは……せん。


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