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□一年に一度の…
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「お疲れさん、センセ」
「ニオウくん」
勤務をようやく終え携帯を確認すると、よく知った相手から『駐車場で待ってる』とのみ書かれたメールが来ていた。

―誕生日思い出してくれたみたいですね

そう思うとさっきまでの疲れが一気に吹き飛んで顔がほころぶ。


今年はどうやって祝ってくれるのだろう?何にしても喜ばせてくれるに違いない。
期待を胸に助手席へと体を滑らせた。



「え」
車に乗ってやってきたのは家ではなく所謂リゾートホテルで、戸惑っているワタシを余所に彼はさっさとチェックインを済ませエレベーターのボタンを押す。
「やぎゅ、はよきんしゃい」
楽しそうに笑うとワタシの手を取り箱の中に招き入れた。



着いた先は最上階のスイートルームで、それだけでも驚きなのに中に入ると豪華な食事がワインと共に用意されていた。
「……ここの支払い大丈夫なんですか?」
驚きの連続でまるで検討違いの言葉が口から出てしまう。
いつだってこういった演出をするのは自分で戸惑うのは彼だから…
「今年は別の祝いも兼ねとるからの、コレはそっちの。誕生日のは食事が終わってからな」
さっさと座れとグラスにワインを満しグラスを掲げる。
―あぁもう、この人ときたらほんとに……

喜びの気持ちを、今はただグラスの音で伝えた。
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