STORY(赤也不二)
□試合をしよう
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校内のあちらこちらから大きな声が聞こえてくる。放課後の学校は活気が溢れている。
「ふーん…やっぱ部活が盛んだねぇ。うちだって負けちゃいねえけどな!」
1人ぶつぶつ言いながら他校をキョロキョロ見渡し目的地へ向う。都内にありながらなかなか広い学校だが、数回来たことがあるので迷わずたどり着いた。
フェンスの向こうに知った顔を見つけ出すと声をかけた。
「よお、桃城。」
「何だよ〜、またお前かぁ!今日は先輩達は来ないぜ。」
「違ーよ。今日は練習試合申し込みに来たんだよ。」
「この時期にかぁ?」
「この時期だからだよ。お前達は守りだろうけどよ、俺達はチャレンジャーだかんな。攻めて攻めて攻めまくるのさ。新人戦には俺たちにたてつけない程、お前ら潰してやるぜ。」
「その言葉そっくり返してやるよ。」
同学年でもあり、互いの実力は認めている。だからこそ一歩も引けない。
赤也はここへ来た試合の目的も忘れ、桃城・海堂をはじめとする青学を叩き潰してやると、ふつふつと闘志が湧いてくるのだった。
もちろん桃城も同じである。
フェンスを挟んだ睨み合いが続く。それを断ち切るように…いや、追い打ちをかけるように加わった。
「なんだてめぇ。喧嘩売りに来たのかよ!」
新部長の海堂だ。
前部長が感情を表に出さず冷静沈着だったのとは全く違い、感情的な部長だ。いや、喜怒哀楽の《怒》に関してだけ感情豊かかもしれない。
「そんな為に、わざわざ来るかよ。試合をしてもらおうかと思ってな。」
そうそう、本来の目的は試合の申し込みなのだ。こんなところで相手を怒らして、試合を拒否されてしまったら話にならない。
赤也は目的達成もために、感情を抑え作り笑顔で海堂に向き直った。
「あのさ、うちと試合しないか。」
「今はまだそんな時期じゃねえ。」
「でもさ、次期レギュラーの力試ししたくねえ。」
「俺と桃城がいるから間に合ってる。」
「試合慣れも必要じゃねえ。」
「まだいい。」
「うちとやって、勝つ自信がねえの。」
「なにぃ!このやろ言わせておけば!ぶっ潰してやる。」
「潰されるのはあんただけどね。」
また睨み合いが始まる。
『ゴツッン』
緊張感を壊す音が響いた。
「いってえ!!何すんだ…えええええ!幸村部長!何で!」
赤也の頭を遠慮なく殴ったのは幸村だった。
「こんな事になるだろうと思ってたら、案の定だね。赤也は本当に裏切らないよ。すまなかったね、桃城、海堂」
にこりと笑いかける幸村は穏やかで優しげだったが、逆らうことを許さない雰囲気を持っていた。
「何か、不二先輩に似てる…」
あらためて幸村から試合を申し込まれた2人は、ただ頷くだけだった。
「赤也、帰るよ。」
「い、い、い、嫌だぁ!」
「部室で真田と柳も待っていてくれるよ。」
「やだ!やだ!」
「今日の報告をしないとね。」
「絶対にいやだぁ!!!!」
赤也の叫びなど聞こえないかのように耳を引っ張って連れて行く。
「やだぁぁぁぁぁぁぁl!」
2人の姿が見えなくなっても、叫び声は響いていた。