STORY(未来編)
□君との距離
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大学は長い夏休みを迎えていた。落ち着いた人気の無いキャンパスを菊丸は不二を探していた。いくら忙しい不二でも、夏休みなら家にいるだろうと思い電話を掛けてみたところ、今日も研究室へ行っているとのことだった。
「もう、折角の休みだっていうのに、そんなに勉強しなくてもいいにゃ!!」
文句をたれながら、法学部棟へ入っていく。
「なんか、厳めしい感じがするにゃ…良かった教育学部で…あっここだ。」
プレートには諸岡研究室と書かれており、名前の下には米法とあった。
トントン
返事が無かった。
「いないのかにゃ?」
トントン
もう一度叩く。
「はい。どちら様ですか?」
尋ねながらドアを開けたのは不二だった。
「もう、不二、探したんだからにゃ!」
「どうしたの?」
「今年も高等部全国だろう。桃達も3連覇だって頑張ってるから、陣中見舞いがてら練習見てやろうと思ってさ。」
「そうか、みんな頑張ってるんだね。」
「今年の氷帝は手強そうだし、立海に裕太のルドルフも出るんだろう。それにほら、不動峰のやつらが行った熊本の獅子ヶ谷高校も。あそこ橘と千歳が寮があるからって地元に戻って渇入れてさ、昨年ベスト4だったし…」
「話がはずんでいるようで悪いが、不二くん、これとこの論文をファイリングしておいてくれないか。そうしたら今日はもういいよ。」
奥から眼鏡を掛けた人の良さそうな男が声をかけてきた。
「諸岡先生、すみません。直ぐに取り掛かります。ごめん英二、ちょっと待ってて。」
顔の前に右手をかざし、不二は部屋の奥へ戻っていった。
「では、お先に失礼します。」
10分程経ち不二は出てきた。
「あれ誰?」
「諸岡先生?アメリカ法を教えてもらってるんだ。青学大にはこの授業がないんでね。」
「アメリカ?」
「そうだよ、アメリカ」
「…にヒヒ」
「何?気持ち悪いよ。」
「手塚だにゃ。」
「…!」
「将来アメリカに行くの?」
「う〜ん、まだ分からない。ただもし行くことがあれば、アメリカの法律知ってたら手塚の役に立てるかなって…もう、いいでしょ!」
「ふふふ…不二顔が赤いよ。健気だねぇ。それで忙しくてテニスにも付き合えなかったの?」
「そういう訳じゃないんだけどね。」
「後輩指導誘ったの迷惑だった?」
「そんなこと無いよ。久し振りにみんなの姿みたいしね。高等部は桃が部長だっけ。楽しみだね。」
不二はいつもの笑顔をたたえ高等部テニスコートを目指した。