STORY(未来編)
□再会
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「…う…嘘だろう…」
部員たちが目を丸くする。
それもそのはず、誰一人僕から1ポイントも取れないのだ。
さすがに数年ぶりに握るラケットに不安はあったけれど、ゲームを始めてしまえば覚えていた身体が勝手に動く。
「何だよ…不二、テニスできんのかよ…!」
久し振りのゲーム、気持ちが高揚する。
やっぱり、テニスはいいな。
懐かしい恋人にでも会ったような感じ。
少し照れくさいような、優しく包まれているような、暖かい気持ち。
その時だった。コートへの扉を開けて入って来た者がいた。
「不二ではない、不二先生だろう!」
この声…
太く張りのある厳しい声…
みんなが恐れていた、でも僕には甘く優しく聞こえたこの声…
「手塚プロ!!」
振り返るのが精一杯だった僕に代わって、生徒たちが叫んだ。
「何で手塚プロがここに居るんだ!」
「青学のOBだったよな。」
「ドイツに居るんじゃないのか!」
ざわざわとちょとした騒ぎになったコートに、また1つ騒ぎのもとを投下した。
「不二、試合をしてくれないか?」
僕の心は(無理だよ。試合になんてなりっこない、止めておいた方がいい)と叫ぶ。
でも、手塚の目に操られるように僕は頷いてしまった。
プロとして活躍しているキミと、数年もテニスから離れていた僕、結果など火を見るより明らかだ。
でも、勝てないにしても今の僕にできる精一杯のプレーをしたい。キミに軽蔑されるような姿を見せたくない。
「手加減無用だよ、手塚。」