STORY(跡不)

□気に入らないわけ
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2校が到着した。

各校の部長が挨拶と日程の打ち合わせに顔を合わせる。

手塚はいつものように無表情。

幸村は何かを楽しむかのようににこにこしている。
もちろん恋人である跡部に会えたのだから嬉しいのは当たり前だろう。しかし、幸村はプライベートをテニスに持ち込むことはない。

(何をたくらんでいる…)
手塚は気になっていた。

跡部は何かしら不機嫌なようだった。
目の前に幸村がいると言うのに、目もくれずにこりともしない。何か他のことで頭がいっぱいのようだ。

「……ということでいいか?」

「…」

「…跡部?いいか?」

「…!あっ、ああ、それでいい。」

「何か気になることでもあるのか?」

「いや、何でもない。」

「体調がすぐれなければ、休んでたらいいよ。」

幸村がそっと跡部の肩に腕を回す。
自分の恋人を心配する自然な行動だった。



「他人の学校まで来て、いちゃいちゃするなっての!なっ不二。」

「う…うんそうだね。でも仲が良くて羨ましいよ…。」

「まあね、好きな人とは仲良くしていたいもんね。だから不二とはずっと仲良しだにゃ」

菊丸が不二に背後からじゃれついてくる。いつものことに微笑を浮かべながらも、不二の心は他にあった。

好きな人は他の人の恋人。
切なくて切なくて…
自分の目に触れなければ、この思いも胸の奥深く仕舞いこむことが出来たかもしれない。しかし、テニスを続けていく限り、上を目指していく限り嫌でも姿を目にしてしまう。
その人も、その人の恋人も…
見るなと自分に言い聞かす
それでも目は2人を追ってしまう
霞んで見える2人の姿
見るなとまた言い聞かす
見てはいけない
みんながいる
笑っていなければ、僕ではない…

「不二、少しいいか?」

「あっ、うんいいよ。」

菊丸の手をそっと払い、手塚について行く。
この聡明な部長はきっと僕の心の内を知っている。だけど、口にはせず何気なく気遣ってくれている。今だって大した用事は無いはず、ただ僕を2人の姿が見えない処へ連れて行ってくれるのだろう。
僕が涙を流さずに済むように。
この人を愛することが出来たなら良かったのに…
それでも僕の心は跡部を求めてしまう…
思ってもどうしようもない人なのに…
幸村の恋人なのに…
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