STORY(跡不)

□気に入らないわけ
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学校がそれぞれ東京と神奈川なので、2人が出掛けるのは横浜や吉祥寺等都心から離れた場所なのだが、それにもかかわらず2人の噂は青学にも入って来た。

「あの2人がね…」

「なんか、どっちも偉そうでなんか怖い…」

「休みの日は1日中テニスらしいにゃ。時々後輩のしごきもやってるらしいよ。」

「うへぇ!俺は絶対あの2人から指導はされたくないっすよ!」

もちろん甘い噂でもなければ羨ましがる者もいなかった。
ただ、1人を除いては。

「へえ、そうなんだ。いいな…僕も一緒に混ぜてもらいたいな。跡部の美技って興味あるし、間近で見てみたいな。それに、跡部って意外と面倒見いいんだよね。あれで優しいし、幸村が羨ましいよ。」

「そっか、不二は小さい頃から跡部を知ってるんだっけ。」

「そうだよ。」

不二は本当に幸村が羨ましかった。
パワーのない不二は、どうしてもテクニックでの勝負が多くなる。
跡部はパワーはもちろんあるのだが、それに加えてテクニックも人より抜きんでている。
不二の技は誰もが認め一目も二目も置いているのだが、本人はどうも小手先のその場凌ぎの様な気がしてならないのだ。跡部の様な圧倒的な、相手がその一球を見ただけで戦意喪失してしまうような技が欲しかった。

不二が、幸村を羨む理由はそれだけではないのだが…

「全員集まれ!」

手塚の声に、だらけていた部員がシャキンとし集まって来た。
全国が終わり3年は引退していたが、そう簡単にテニスと離れられないので、練習相手という名目で練習に参加していた−は、部員達から一歩離れたところで話を聞くことにした。

「練習試合が決まった。次の日曜、場所はうちだ。相手は氷帝と立海、1・2年中心の試合となるだろう。全国に行くには避けられない相手だ。それぞれの実力を見るいい機会だろう。心して臨むように。それから、この試合から海堂が部長としてみんなをまとめていけ。頼んだぞ。」

海堂の少し緊張気味だが大きな声と共に練習が再開された。

菊丸たち3年生も練習相手になってやるとコートへと散って行く。
 
人気が無くなるのを待って、不二は手塚問いかけた。

「ねえ、手塚。3年はどうするの。」

「来たければ来ればいい。後輩の指導は先輩の立派な役目だからな。」

「氷帝も3年は来るのかな。」

「ああ、レギュラーは全員来るらしい。」

「あそこは専用バスがあるもからね。…立海は?」

「幸村と真田が来るらしい。」

「…やっぱり来るんだ…」

「気になるのか?」

「な、何が?」

「隠さなくても分かっている。跡部と幸村が気になるんだろう。全く、あの2人は自分達がどんなに有名人なのか分かっていない。」

そう言うと大きくため息を吐いた。

「青学もその噂で全員浮ついている。全員というか3年生だな、困ったものだ後輩を巻き込んで…」

手塚は不二の肩を軽く叩いて言った。

「お前は鬱々としているしな。」
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