STORY(パラレル)
□ふじ頭巾ちゃん
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「おや、ふじ頭巾ちゃんじゃないか。」
「あっ、ゴリタカさん。こんにちは。」
声を掛けてきたのは、ふじ頭巾ちゃんと仲良しのゴリラのタカさんでした。
「たくさんのお友達と何処へ行くの?」
「お爺さんのところに。みんな心配してついて来てくれるの。」
「そうなんだ。荷物重そうだね。持ってあげるよ。」
そう言うと、ふじ頭巾ちゃんの持っていたバスケットをひょいと受け取り、おまけにふじ頭巾ちゃんまで肩に乗せてくれました。キクマルも一緒に肩の上に、桃尻猿は頭に、マムシは首にぶる下がりみんな楽ちん。
「ゴリタカさんって力持ちだよね。」
ふじ頭巾ちゃんはとても嬉しそうです。
森の外れまで送ってもらい、ここで桃尻猿さんとマムシさんとゴリタカさんとお別れです。
「みんなどうもありがとう。」
にっこりと微笑み、ふじ頭巾ちゃんはみんなにバスケットの中のパンをお礼に分けてあげました。
「ねえキクマル、森のみんなって親切だよね。」
「ニャニャニャン。」
「綺麗なお花はあるし、美味しい木の実もあるしね。」
「ニャン。」
ふじ頭巾ちゃんとキクマルはそんなお話をしながら歩いて行きました。
お爺さんのお家ももうすぐです。
すると、突然、真黒なマントを着たお婆さんが近づいて来ました。
「お婆さんなんて、こんな綺麗な僕をつかまえて失礼ですね!」
「あなたは誰ですか?」
ふじ頭巾ちゃんはお婆さんに尋ねました。お婆さんは顎に掌をあてがいうっとりと答えました。
「んふ、僕ですか?僕は魔法の国の貴公子ミズキですよ。あなたに林檎を差し上げようと思って待っていたんですよ。」
「林檎を僕に?」
「そう、裕太印の林檎です。これを食べればあっという間に幸せ気分ですよ。」
「裕太印!ワーッ大好きなんだ。ありがとう。」
ふじ頭巾ちゃんは、パクッと林檎を一口かじったとたん倒れこんでしまいました。
「んふ、僕のシナリオ通りですね。あなたが悪いんですよ。僕の裕太くんが世界で一番あなたが好きというから…これで、僕が一番です。さあ、このまま狼に食べられてしましなさい!」
この様子を見て、キクマルが黙っているわけありません。
「ギャニャニャン!!」
「うわー!何をするんですか!!」
ひっかく・かみつく・蹴飛ばす・キクマル必殺技キクマルビームまで飛び出し、ミズキは逃げ出しました。
キクマルはふじ頭巾ちゃんに駆け寄りました。しかし、どんなに揺さぶっても、叩いても目を開けません。
「グニャーン!!」
「何の騒ぎだ?あ〜ん。」
キクマルの泣き叫ぶ声を聞きつけて、やって来た者がいます。
隣の国の王子様のケーゴでした。
キクマルはケーゴ王子に今迄の話をしました。
「なるほどな。こういう場合は、王子様がお姫様に口づけると目が覚めるんだったな。」
ケーゴ王子が口づけようと抱き起こすと、ふじ頭巾ちゃんの口からポロっと何かが落ちました。
林檎のかけらです。林檎のかけらが喉に詰まっていたのです。
「ゴホッ、ゴホッ…ありがとうございます。でも…王子様お話が違います。」
「そうだったかな。まあいい。気が向いたら俺様の城に寄りな。」
そう言い残しケーゴ王子は去って行きました。
さあ、気を取り直して。お爺さんのお家は目前です。