STORY(パラレル)

□君がくれたTeatime
2ページ/18ページ

高校に入学してからの初めての定期テストを終え、不二と菊丸は開放感とこれから訪れるであろう追試の恐怖に複雑な気分で駅へと向かっていた。

「あぁ〜数学と英語赤点確実だよぉ。不二はいいよにゃ、できるもん。」

「そんなことないよ、物理難しかったし…。」

「いいよにゃ、学年トップは、何の心配もいらないしぃ。」

「でも、英二は運動神経いいじゃない。」

「まっいいか。追試勉強よろしくね、不二。」

二人は私立青春学園高等部に入学したばかりだった。青学は中学から大学まであり、ほぼエスカレーターで進学できる。そのため中等部から青学に通っている菊丸は、すっかりのんびりしてしまっている。そのため成績は低空飛行だった。一方不二は数少ない高等部からの生徒で、外部からは難関とされている入学試験をトップクラスの成績でクリアしてきており、学年トップを争っていた。
知り合いがおらず、一人でいた不二に声を掛けてきたのが菊丸だった。人懐っこい菊丸とはすぐに仲良くなった。菊丸曰く、
「桜吹雪の中に佇む不二が桜の精に見えたから、妖精と仲良くなりたい」
と思ったそうだ。

「ねえ、そんなことより、どっか寄り道しない。」

「そうだね、僕のど渇いちゃった。」

「じゃあ、喫茶店よって行こう。」

「…」

「どったの、不二?」

「あっ、ごめんね。あのさ、この道って気にならない。なんか、ここだけヨーロッパの石畳みたいで、いつも気になってたんだ。」

「じゃあ、行ってみようよ。」

不二の腕を掴むと、菊丸は石畳を歩き出した。この一帯だけ開発分譲だったのか、石畳の両側に洒落た家並みが続く。100mほど行くと緑豊かな公園になっていた。さほど大きくはないが、真ん中に児童用の遊具や砂場があり、取り囲むように遊歩道が完備されていた。

「ねえねえ、不二。あそこ入ってみよう。」

菊丸の指差すほうを見てみると、公園の前にマリンブルーに白い文字で『蒼』と書かれた看板の喫茶店があった。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ