STORY(パラレル)

□夢を追い続けて
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そして新年度を迎えた。
今日は午後から入学式があるため、部活動は顔合わせ程度のミーティングがあるだけだった。
手塚は生徒会長として入学式で挨拶をする事になっている。
その確認をしていたためミーティングに少し遅れて行ったのだが、手塚の顔を見るなり

「今日さ、うちのクラスに編入生が来たんだよ!男なんだけどさスッゲー綺麗なの!俺さ直ぐ話し掛けて見たんだけどさ、テニスに興味あるんだって!うちに誘ってみようかと思ってさ!」

(ああ、菊丸のクラスになったのか)

前もって竜崎から話は聞いていたので驚くこともなかったのだが、その態度に不満だったようで不満を口にする。

「もう、この時期に入って来たんだよ!うちは私立なんだから転校生は珍しいじゃん!でも、何でこの時期何だろう?高等部からでも良かったんじゃ…」

竜崎に不二の病気の事は本人から口にするまで知らない振りをしてくれと頼まれていたので、大石が必死に菊丸の関心を他に向けようとしていた。

「今年は全国制覇だ。油断せず部活に励んでくれ。以上で今日は解散だ。」

『はい』



ミーティング終了後手塚は入学式に参加するため校舎へと戻って行った。
昇降口で靴を履き替えていると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
竜崎だった。その隣に知らない少年が立っていた。
直ぐに竜崎の孫だと分かった。
 
(男なのにスッゲー綺麗)

菊丸の言葉が思い出された。
確かに力を入れて抱きしめたら折れてしまいそうな華奢な体つきに、全体的に色素が薄い感じがする。サラサラな茶色い髪。日に当たると茶色というよりブロンズのようにキラキラ輝いている。しかし、存在感は決して薄くはない。何故だろうと、手塚は失礼を承知の上不二を見つめる。

(ああ、そうか…)

こんなにも存在を感じさせられるもの、手塚はそれに魅せられた。
そう、それは不二の眼差し。茶色の瞳の奥にある力強い眼差し。何物にも怯まない、真っすぐな眼差し。不二を美しく見せるものは顔立ちよりもこの眼なのかもしれない。

(この眼で頼まれれば竜崎先生も折れるしかなかったんだろう)

そんなことをぼんやり考えていると、自分を呼ぶ声にハッと我に帰る。

「おい手塚よ、聞いとったか?」

「すみません。何だったでしょうか。」

「おいおいしっかりしてくれよ。この子が前に話した周助じゃ。周助、部長の手塚じゃ。テニス部のことなら手塚に何でも聞いてくれ。」

不二はニッコリと微笑むと、手を差し出し

「初めまして。3-6に編入してきました不二周助です。テニス部のマネージャー希望なんだけど…いいかな?」

「ああ、歓迎だ。」

社交辞令ではなく心からそう思えた。

これが2人の出会いだった。
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