STORY

□信じている
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帰宅すると、鞄を机の上に放り投げベッドに横たわった。明るいうちに帰宅するのは久し振りだ。テスト期間でも、必ず誰かと打合ってから帰るので日は暮れている。

(一体どういうことだ…誰が、どうして…)

放課後担任に呼ばれ、連れられて行ったのは校長室だった。そこには厳しい顔をした校長と複雑な顔をした生活指導の先生がいた。只ならぬ雰囲気と呼び出される覚えがない躊躇いとで僕はその場に立ち止まった。

「大丈夫だよ。」

担任は微笑み、そっと僕の背中を押した。僕は校長の前に押し出された。

「君は不二君だね。此処に呼ばれた理由を分かっているかね。」
僕は無言で首を横に振った。

「君は家でパソコンを使うかね。」
また首を振る。

「使い方は知ってるかい。」

今度は首を縦に振る。

「ちょっとこれをみてくれたまえ。」

校長の机の上のパソコン画面を覗き込んだ…

「何だこれは!!!」

僕は目を見開き一言叫ぶしかできなかったが、繰り返し画面の文字を追っているうちに怒りで震えてきた。

「何ですかこれは!僕はこんなの知らない。」

『青春学園2年の不二周助に乱暴されて妊娠してしまった。彼に相談しても冷たく笑って僕は知らない勝手にすればいいと言うだけだった。私は一人手術を受けた。望まぬ形で授かった子だったが、私の赤ちゃん…産んであげたかった…でも親にも言えず一人育てることなど出来ない…彼に報告するとまた作ってやるよと笑った。優しい笑顔の下は悪魔!』

パソコン画面には青学裏ネットの文字と様々な書き込み、その中にこの書き込みがあった。

「裏サイトがあることは学校も知っていた。だからこうして見回りしているわけだが、教師の悪口などはあったが特に問題はなかったんだ。しかし今回は校内でもかなり噂になってしまったし、内容が悪質なため見逃すことは出来ない。不二、普段の生活態度を見ていれば君に何の関係もないのは分かる。」

担任は僕の肩にそっと手を置くと話を続けた。

「ただこれだけ不二の名で噂になると関係ないではすまなくなる。」

「君にこんなことを書かれる心当たりはないのかね。」

立ち上がりながら尋ねてきた校長に僕は知らないとしか言えなかった。

「実際投書があるんだよ。こんな奴を学校に置いておいていいのかとか、成績が良ければ何をしてもいいのかとかね。」

「生活指導部で話し合ったんだが、暫く別室登校をして貰うことにした。勿論部活も禁止だ。」

「何、噂などすぐ消えるさ。そうしたら教室は戻ってくればいい。」

先生達の言葉は素通りして行った。
僕の頭の中は『一体誰が何のために』ということだけだった。

どうやって帰って来たのか分からない。分かったこと…それは今までのみんなの視線の意味…。
教室へ行けない、テニスも出来ない手塚に会えない。手塚はこの噂を知っているんだろうか、知っていたとしたらどう思っただろうか…。

「軽蔑するよね…信じたりしないと思うけど…こんな噂立てられるなんて…嫌われたかな…馬鹿だよね僕…。」

涙が頬を伝った。
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