STORY(未来編)

□背負うもの
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全中の全国制覇を果たした青学テニス部員は、高等部に揃って進学した。但し、家業を継ぐ河村は部活に所属しなかった。また、プロを目指す手塚も、進学せずプロになりたいという希望は周りからの『高校は出ておきなさい』という声に押され進学はしたが、コーチにつきプロを目指すため部活には入らなかった。
彼らがいる3年間、全国大会には出場したが、やはり手塚と河村が抜けた穴は大きくベスト8止まりに終わった。

「ああ、とうとう優勝できなかったなぁ。」

「うん、みんな頑張ったんだけどね。でも中学のときはただがむしゃらだったような気がするけど、高校では周りを見渡す余裕も出来て、僕はそれなりに楽しかったな。」

「あっ、俺も俺も!でも、第一に不二と3年間過ごせたのが楽しかった。」

「僕もだよ。まさか、英二とまた3年間同じクラスなんてね。」

「これは、運命かも。手塚から俺に乗り換えない。」

「いいかもね。英二となら楽しそうだよね。」

「いいことなど無い。」

「手塚!」

「菊丸、悪いがたかが3年間同じクラスだけでは運命とは言わん。偶然と言うんだ。不二は連れて行くぞ。」

「はいはい。不二、また後で。」

「うん。」

桜も綻び始めた3月初めの今日、青学高等部は卒業式を迎えた。夕方、テニス部員は卒業を祝うため河村寿司に集合する事になっていた。


青学で6年間共にしてきたテニス部員も、今日でそれぞれの道を歩き始める。
大石はスポーツトレーナーを、菊丸は体育教師を目指し体育大へ。
乾は弁護士目指し青学大法学部へ。
そして不二は、新聞記者になるべく他の大学だったが文学部へ。

「手塚はテニスに専念だね。いよいよプロデビューか…僕も早く手塚専属の記者になりたいな。」

「お互いいつになることことやらだな。」

「手塚は直ぐだよ。僕が保証する。それで、手塚プロのファン第一号になるんだ。」

「不二…なかなか会えなくなるな…だが、生涯を共にするのはお前だけと決めている。時が来たら迎えに行く。そのときは、俺の元へ来てくれるな。」

「クスッ。なんかプロポーズみたいだね。」

「みたいではなく、プロポーズだ。俺と結婚してくれないか。」

「手塚…僕だって生涯君だけだよ。君がいればいい。君と一緒にいたい。」

「不二、愛している。」

「僕も…。初めてだね、愛していると言う言葉をくれたの。」

「もう社会人になるのだからな。学生のうちは愛していると言う言葉は重かった。気持ちは同じだが、親の庇護の下にいる俺に一人前の言葉など言う権利がないと思っていた。だから、親から卒業した時にお前に告げたかった。俺の社会人になった証だ。不二、愛している。」

手塚の漆黒の瞳が不二の少し潤んだ琥珀色の瞳を捕らえた。手塚の左手が不二の頬を包み、右手は不二の腰を引き寄せる。不二はそっと手塚の背中に両手を回した。

「愛しているよ…」

「僕も、愛している…」

二人は唇を重ねた。
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