STORY

□弱さと強さ
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僕が出来るのは、肩に触れることくらい…
仲間だから肩を組むことは全然不自然なことじゃない…だけど…12pも身長が低い僕から肩を組むと不自然になる。英二の様に抱きつくこと…そんなこと恥ずかしくて僕には出来ない…第一周りからは僕がそんなことするような、どちらかと言えば人とのスキンシップを避けていると思われているだろうし…手を伸ばし掛け、やはりやめてしまう…そっと、さりげなく肩に手を置くことが今の僕の精一杯…

練習中、部員を見つめる君の横に並んで立ってみた。そして、2人で部員個々のプレーについて話すんだ。ここは、僕の定位置になりつつある。思わず顔が綻んでしまう。でも、気付かないよね。いつも、どんな時も僕は笑って誤魔化してしまうから。
「お前はいつも愛想笑いだ。たまには本当の笑顔というものを見てみたいものだ。」
君はそう言うよね、きっと。

でも、その定位置も危うくなっている。誰より負けず嫌いのルーキーが、僕よりも君の横に居ることが多くなったよね。
実力だって…負けてはいないと思う、今は…でも、そう遠くない未来抜かれる。そして、僕の手の届かないところへと駆け上がる…そんな気がする。そう思うと、僕より君の方がそこに居ることが相応しいような気がする、ねっ、越前。

これから、僕はどうしたらいいのだろう…僕の居場所はどこだろう…。
僕は、こんな弱い人間だったんだろうか…
僕をこんなに弱くしてしまったのは、君への思い…手塚…僕は、淋しいよ…



「付き合って欲しいの。」

そう告白されたのは、そんな最中。
真剣な眼差しで僕を見つめてくる。
嫌いではない、だけど好きではない…僕の好きはただ1人だけ…

「今、私を好きじゃなくてもいいの。少しづつ私を知って行ってくれたら…」

「君は、淋しい?」

彼女は一瞬訳がわからないという顔をしたが、

「不二くんが、付き合ってくれたら淋しくないと思う。」

小さな声で答えてくれた。

「いいよ。お付き合いするよ。」

「…!本当!」

「ああ。」

「ありがとう!嬉しい!早速、今日一緒に帰っていい?部活終わるの待ってるから。あ、部活みててもいい?」

「邪魔にならないようになら。」

「うん。わかった。じゃあ、後でね。」

彼女は軽やかにスカートを翻し、駆けて行った。
淋しい人間は、作りたくない…
僕も淋しさから解放されたい…
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