STORY

□気になるのは…君のこと
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なぜだろう、気になってしょうがない…
あれは、昼休みだった。
残っていた書類を片付けてしまおうと思って、生徒会室へと向かう渡り廊下だった。
普段は余所見などしないのだが、このときは視界の端に捉えたものが気になった。
あれは…木の枝の隙間から…そう、人目を避けるように佇んでいたのは…見覚えのある茶色がかった髪。
声を掛けようかと思い一歩踏み出したが、他に人がいることに気付きそのまま立ち去った。
そして背後から聞こえてきた言葉…

「好きです。」

震える小さな声…

そして、

「ごめん…好きな人がいるんだ。」




「なあ、乾。不二は人気あるのか?」

「ほお、手塚がそんなことを気にするなんて珍しいな。青学レギュラーは、みんなもてるぞ。」

「そうなのか?」

「ああ、誕生日やバレンタインなんかは凄かっただろう。」

「段ボールにチョコレートがたくさん入っていた…あれがそうだったのか…」

「中でも不二は人気あるぞ。」

「そうなのか?」

「ああ、男にも女にもな。」

「!…どういうことだ?」

眉をしかめ鋭い眼光を乾に向ける。

(本当に分かりやすいよな手塚は、何が無表情なんだか…)

「そのままさ、不二は男に言い寄られることもお・お・い!フフフ…」

意味ありげな笑顔を残し乾は立ち去って行った。
コートに目をやると部員が練習に励んでいる。
第一コートはレギュラー専用となっており、たった今話題になった仲間達がボールを必死に追っている。

(確かにそうかもしれんな…)

大石は控えめな存在ではあるが気配りがきく。大石と一緒に委員などやればどんなに頼りになる存在か分かるだろう。

河村は一見強面だが、根は優しく穏やかな性格である。面倒見もよく力仕事などは進んで引き受けてくれる。

菊丸はあの明るさと愛らしい容姿でアイドル的な存在だ。女友達も多い。一緒に居て楽しいだろう。

乾は掴みどころがないないが、理数系が得意だ。理論を述べさせたら右に出るものはそういない。この頭の良さが魅力かもしれない。おまけに眼鏡を外すとなかなか男前だ。

そして
不二…
かっこいいというよりは綺麗と言う形容詞が合っている。
何もつけていないと本人は言っているが、傍に行くと爽やかな香りがするような気がする。
成績も10位以内には入っているだろう。
人当たりもよく、思いやりもある。負けず嫌いなところも可愛い…

可愛い?!
可愛いって何だ。
不二は男だぞ。しかし、綺麗で可愛い…

(好きな人がいるんだ…)

誰だろう…

気になる…



「ねぇ、不二。手塚が睨んでるよ。何かした?」

「う〜ん。手塚に怒られるようなことしてないと思うけど…聞いて来る。」

「あっ!不二。あ〜あ、行っちゃった…余計怒られるにゃ…」



不二は、そっと手塚に近寄って行った。手塚はまだ気づいてないようだった。

(確かに、怖い顔してるな…いつもより眉間の皺が多いような…何考えてるんだろう…)

「手塚…」

「…」

不二の呼びかけに返事はなかった。

(聞こえなかったのかな?)

「手塚!」

さっきより少し大きな声で呼んでみた。


「ああっ!」

不意に名前を呼ばれ驚いて振り向くと、ニッコリと今思い浮かべていた顔があり、思わず声をあげてしまった。

「嫌だな、お化けでも見たみたいに驚かないでよ、もう!声かけられてそんなに驚くほど何を考え込んでいるの?」

気になる…

気になる…

じっと、不二を見つめる。

何か離し掛けているが、そんなことはどうでもいい…

気になる…

何故だ…
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