STORY
□悪いのは…!
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昼休み、不二は木陰で読書をしていた。10月の上旬、秋の気配は感じるものの陽だまりはまだ温かく日向ぼっこにはもってこいに時期だ。生活の殆どを部活に費やしていた今までと違い、自分の好きなことを(もちろんテニスは大好きだが)する時間も持てるようになり、今迄買い溜めておいた本を読むこの時間が好きだった。
その空間を破る声。
「ふじ〜!」
同じクラスで親友の菊丸だ。
「不二、聞いてよ!」
「そんなに急いでどうしたの?ほら、ここに座りなよ。」
「はあ…はあ…うん。」
不二の飲みかけのペットボトルのお茶を一気に飲み干すと、落ち着いたのか急に赤くなり俯いてしまった。
「どうしたの?」
「…あのね…」
「うん?」
「あのね…告白されちゃった…」
「えっ…なんだ…英二ならありでしょ。そんなに驚くことじゃないよ。」
「そうかな…?」
「そうなの。明るくて、優しくて、いつも人の輪の真ん中じゃない。好かれてあたりまえだよ。」
「そうかなぁ〜。」
「そうだよ。」
「まあ、不二ほどじゃないけどね。」
いたずらっ子のような笑顔を浮かべ、片目を瞑っておどけて見せる。
実際、恋愛感情はさて置き、菊丸は男女問わず人気がある。先輩や先生達からも可愛がられる典型的な末っ子気質だ。
「それで、誰に告白されたの?」
「あのね…」
「ああ、あの子。凄く可愛いじゃない。」
「でしょ、だから余計にびっくりしてさ。」
「でも、英二とお似合いだよ、ふふ。」
「ありがとさん、不二。で、お願いがあるんだ。」
「何?」
「今度の日曜に遊園地に行くんだけど、一緒に来てほしいにゃ〜。」
「デートのお邪魔をする気はないよ。」
「違う、違う!二人っきりって、何か恥ずかしいじゃん!だから、彼女も友達を連れて来るからダブルデートしようってさ。」
「ダブルデート…あまり気が進まないな…。」
「お願い!女の子と二人なんて何していいか分からないよぉ!それとも、不二は俺がデートに失敗してもいいのぉ〜。」
両手を顔の前で合わせ、上目づかいで見上げてくる菊丸には勝てない。
「わかったよ…。」
「ありがとうさん!」
(英二に甘いよな…)
内心ため息をつく不二だった。