STORY

□思いを風に
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「不二、今日昼一緒に食べないか。話したいこともあるし、屋上でまってるからな。」

ある日、朝練が終わった後、手塚から声をかけられた。話しかけられたのも久し振りだったし、ましてや昼休みに誘われるなんて初めてだったので、僕は有頂天になっていた。
授業も上の空のまま、午前の授業が終わるな否や屋上へ駆け上った。誰にも邪魔されたくなくて、なるべく人気のない場所を選び陣取った。

(何、期待してるんだ僕…)

ただ、一緒にお弁当を食べる。それだけなのに、二人だけの大切な時間のような気がして…手塚を待つこの時間さえ愛おしいような気がした。風が僕の長めの髪を揺らしていく。

(風が気持ちいいな…)

僕は、フェンスに寄りかかり目を瞑り手塚を待った。

「不二、待たせたな。」

「ううん。僕も今来たと…こ…。」

「…?どうした不二。」

「えち…ぜ…ん…なんで…いる…の…?」

「ああ、越前がお前のプレーを見て、お前と話がしたいというんでな、昼でも食べながらと思ったんだ。」

手塚は、僕とお昼を食べたくて誘ったんじゃないんだ…僕一人で浮かれてバカみたいだ…もう限界かもしれない…

「ごめん、手塚。僕、用事があって一緒にお昼食べられないんだ。そう言いたくて待ってたんだ。ごめんね。」

二人から姿が見えなくなると僕は駆け出し、ある教室を目指し飛び込んだ。

「乾!」
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