その他夢

□無関心なふり
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さみしいとは思ってもなかなかナル本人には言いだしにくくて、ずっと胸の奥にためこんでた。でもそれがある日とつぜん、爆発してしまった。













「……麻衣」


「なーに? 何か用?」


「間違ってる。ここ、計測がずれてる」


「ええ? そんなはずないよ! ちゃんと名無しさんと一緒に測りました!」



「だが間違ってる。もう一度やり直してこい」


「あの、見せて?」


 ナルからボードをもらって確認して……私はさっと青ざめた。



「……ごめんなさい、麻衣。私がずらしてしまったみたい」



「いいんだよー! 名無しさんは謝らなくっても! でも珍しいね?」



「お前が怖いからってわざわざ名無しさんを連れて行くからだろう。さっさと測りなおしてこい」




「な……っ! お前ー……名無しさんには甘いんだからっ!」




「普段の働きの差だな」



「どーせ私は役立たずです! 測りなおしてくる!」



「……」




 どたどたと怒ったまま麻衣が部屋を出て行ってしまった。




 ごめん、と言って後を追いかけたいのにそれもままならなくて。




「…ナル、ごめんなさい」




「いい。不調な時は誰にでもあるものだ」






「……どうして怒らないの?」




「…名無しさん?」





 麻衣はナルが私に甘いって言った。でもこれは甘いなんてものじゃなくて……ただ単に関心がないだけなんじゃない?




 
「間違ったのは麻衣じゃなくて私だよ?
 なのにどうして麻衣にだけ嫌みを言って私には何も言わないの? 私には怒る価値もない?」



「何を言ってるんだ?」



 今までためこんでたものがどろどろと流れ出していくみたいだ。

 ぐっと目頭が熱くなる。







「ナルは、そんなに私に関心がないの? みんなにはあんなに気楽に接するのに私には壁を築いたままで……そんなに私が嫌いなら一緒に連れてこなければよかったじゃない!」



 来るか、と聞かれてすごくすごくうれしかったのに。




「名無しさん!」



「っ!」





 こつり、と柔らかく頭を小突かれた。








 ナルを見上げると…なんだか困惑したような、でも怒った顔をしてて。




「……嫌いだなんて誰が言った?」



「だって…」



「僕が嫌いな人間をそばに置くほど優しい人間じゃないことは名無しさんが一番よく知っているはずだ。そもそも嫌いな人間をわざわざ国外に行くのに誘うやつがあるか」





「ナル……」



「…さみしかったのか?」




 ……言い当てられて、私は思わずぽろりと涙を流した。




「な、る……っ」




「……泣くな」




 珍しくナルが困った顔をして、私の頭をそっと胸元に抱き寄せてくれた。向こうではあいさつがわりのハグをナルがめったにする人じゃないってわかってるから私はその温かい胸の中でもぞりと動いた。


 驚いて涙が一瞬にして引っ込んだんだけど。




「……ナル?」



「大切に扱ってるつもりだったんだがな。さみしい思いをさせて、すまなかった」



 不器用なナルが謝った。



 それが不思議で仕方なくて、少しだけくすぐったくて。私はふわりと笑みをこぼした。





「んーん。いいの……もう、さみしくないから」

 









無関心なふり




―――――――――――――


「あの二人……付き合ってるのかなぁ?」



「いや、あれはまだ付き合ってはいないだろ」



「あんなにいい雰囲気なのに?」



「時間の問題ってやつだよ。にしても、ナル坊、名無しさんには嫌みもなく頭をこつりと叩くのが精いっぱいかよ」



「私たちにはバカだの無能だのって言いたい放題なのにね」



「……覗き見とはいいご趣味ですね、谷山さん、滝川さん」




「「げっ」」

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