遙か夢弐
□金も食わぬ
1ページ/1ページ
「お兄様、泰衡様は私よりも金が好きなのです」
「九郎、お前の妹は私よりも息子が好きらしい」
「・・・・・・名無しさん、泰衡殿も・・・・・・何を言ってるんだ」
呆れた顔をされて、私はぱしりと扇で床を叩いた。
「呆れてる場合じゃないわ、お兄様! だって私と会うよりも金の散歩を優先するのよ!?」
「お前だって私と寝るより息子と寝る。それとどう違う?」
「はぁ!? ちょっと誤解を招く言い方やめてもらえます!?」
「何が誤解だ、事実だろう」
「お乳をあげるのに一緒に寝ないでどうするんですか! 泰衡さんにお乳あげろとでも!?」
「それもやぶさかではない」
「な……っ!」
かぁっと顔が紅潮したまま叫ぼうとして、九郎お兄様が私の口を塞いだ。
「やめろ、こいつが起きる」
そう言って示したのは名無しさんと泰衡の愛の結晶だった。
齢一か月。
「うー……っ!」
悔しくてじだんだする私に九郎お兄様が大きなため息をついた。
「頼むから、ケンカをするたびに俺を巻き込むのはやめてくれ」
2012/8/30