遙か夢弐
□してやったりと
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まさかゲームの中の人にした恋が叶うなんて思ってなかった。
ええいままよ、とぐいぐい押したことでアーネストと晴れて付き合うことが出来て、私は世の中の奇跡に感謝した。
「アーネスト! 浴衣着てお祭り行こうっ」
「お祭り、ですか?」
きょとん、とした顔で見つめられて私は満面の笑顔で頷いた。
「まっすぐ立っててね?」
小松さんに浴衣を借りてアーネストに着付ける。
―――恥ずかしいなんて言ったら負けって知ってるんだから!
「・・・・・・着付けと言うのは誰でも出来るのでは?」
「・・・・・・アーネストがはじめて浴衣着るんだよ? 私が着付けたい」
ぷくんと少し頬を膨らませてアーネストを見上げると、彼は少し目を瞠ってからにっこりと微笑んだ。
「では私もお返ししますね」
「え? あ、出来たよ」
少し意味が分からないままにアーネストを着付け終わって自分の浴衣を持とうとしたら、浴衣をすっと取り上げられた。
「え、あの?」
「私が着付けてあげますよ、マイプリンセス」
「え!?」
制服のシャツのボタンをぷちぷちと外されて私は慌ててそれを両手で抑え込んだ。
「ちょ、待って待って待って! いいよ自分でするし! てゆかそもそもアーネストって着付けできるの!?」
阻止するために全力で叫んで見上げたのに、アーネストはにっこりと微笑んだ。
「私を誰だとお思いで?」
―――大変な日本フリークのアーネスト・サトウです。
「やだ恥ずかし……っ」
顔を真っ赤にして阻止しようとする私の手を、アーネストがそっと掴んだ。
「・・・・・・かわいい私の恋人さん。あんまりそんな顔で抵抗されるともう一人の私が起きてしまうのでほどほどに」
「もう一人?」
意味が分からなくて、はたと動きを止め・・・・・・数秒かけて意味に気づくと私はゆでだこになっちゃうんじゃないかってくらい耳まで熱くなった。
「ふふ、可愛い人だ。いいから、任せてください。かわいく着付けてあげますよ」