遙か夢弐
□勇気を出して
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――――実はいらいらしてた。
人づきあいを避ける名無しさん。
社交的な望美の妹とは思えない。
綺麗な神子姫様とは正反対で、長い前髪に目がひどく小さく見える眼鏡。顔の半分を隠すそれらの要素は、いっそ彼女を不気味にすら見せていた。
でも次第に彼女は人が怖いんだと気がついて。
なんとなく、柄じゃないくせに放っておけなくて近づいた。
素直に人が怖い理由を話してくれた名無しさんにありがたく思って、俯くよりも上を向いてもらおうと思った。
そして眼鏡を外したんだけど。
涙に濡れた瞳は艶を含み、嗚咽を飲み込む唇は珊瑚のように桃色。
赤みを帯びた白い頬は柔らかそうできめ細やかな肌を持つ。
これで、前髪を切って着るものに気を配れば望美と張るくらい・・・・・・いや、彼女をも凌駕するほどに美しい姫君になるだろう。
控えめな美しさは……俺の心をがちりとつかんだ。
一目惚れなんて実際にはありえないと思っていたのに。
「…やられたな」