遙か夢弐
□突然の出会いは永遠に
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「あー、少し遅くなっちゃったかも」
一人暮らしだからいいものの、まだ家を出る前だったら怒られてたなぁ、なんて思いながら私は足早に家への道のりを急いでいた。
人通りの少ない道を歩いていると、道端に黒い影が見えた。
「?」
・・・・・・粗大ごみ?
黒い何かを見て眉間にしわを寄せながらもそれとの距離を縮めていく。
そして。
「……っ」
それが人だと気づいた。
しかも、黒い服を着ているからわかりにくいけど……。
「だ、大丈夫ですか!?」
怪我してる…!
ところどころに見える血痕に青ざめながらその人の顔を覗き込む。
苦しげに眉間を引き絞り、わき腹のあたりを押さえる手は血まみれで。
「大変……っ、救急車……っ!」
慌ててケータイを取り出して電話をかけようとしたその手を、強い力で抑えられた。
「っ」
はっとして顔をあげると紫の強い瞳が殺気まじりに私を睨みつけていた。
「・・・・・・っ」
荒い息をつき私を睨みつけると、彼は苦しげに腕を下した。
彼の触れていたところが赤く染まっている。
本当なら、救急車を呼びたい。
だって絶対事故か事件だし。
でも……彼の殺気は底冷えのするものだった。なら・・・・・・この人は。
きゅっと唇を引き結ぶと私は電話をかけた。
「…もしもし、瞬兄?」