遙か夢弐
□英国紳士
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「さぁどうぞ、レディ」
紅茶を振る舞われて私は顔が火照るのを抑えきれずお礼を言ってカップを持ち上げた。
「ありがとう。アーネストって紅茶淹れるの上手だよね」
「ありがとうございます。これは英国紳士のたしなみですから」
「そ、か……」
にこ、と微笑みかけられて、二人きりという状況にも緊張して私は頭をフル回転させて話題を持ち出した。
「そ、そういえばね! 瞬くんも紅茶淹れるの上手なんだっ! あと龍馬さんがこの間コーヒーを淹れてくれてね、この国で飲めると思わなかったから嬉しかったんだけどミルクも砂糖も高級品だから用意してなくて、ちょっとチナミくんには苦かったみたい。でも飲んでくれるだけでも態度が軟化したって証拠みたいで嬉しいよねっ。あ、そういえば小松さんが美味しい日本茶が手に入ったから今度おいでって言ってくれてて・・・・・・」
なんてマシンガントークなんだろう、と自分で驚きながら喋っていると、目の前にとんと腕が現れた。
―――腕?
どうかしたのかとアーネストを見上げると……え?
ちゅ、とリップ音がしてやたら近かったアーネストが、お互いの顔が見える場所まで離れた。
「え、あれ? 今・・・・・・」
戸惑いつつも自分が今されたことに気づいて徐々に顔が熱を孕んでいった。
「・・・・・・あまり私の前で他の男性の話をしないでください」
白い頬を染め、アーネストはすねたように唇を尖らせた。
「みっともなくジェラシーを抱いてしまう」
「そ、んな……」
「女性と二人きりで紅茶を振る舞うのは、貴方だからですよ」
「―――」
言葉の意味を正確にとらえて、それでも決定的な言葉がないことに戸惑っていると、再び距離が縮まった。
「・・・・・・愛していますよ、私のかわいいプリンセス」
「―――」
(触れてしまうのは貴方がひどく愛おしいから)
2012/8/11