遙か夢弐
□初々しい
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「慶くん……」
「…なんだ、やかましい」
「やかましいって、ひどいなぁ……」
机に向かって草案を練っている慶くんの背中に私はぴたりとくっついた。
「……神子様、かわいいね」
ぽつりとつぶやいた私の言葉に彼の背中がぴくりと反応した。
それに気づかなかったふりをして、私はそっと目を閉じる。
かわいくて、羨ましい。
清純で清廉な神子姫様。
「俺は」
「ん?」
こと、と筆をおいた音がして衣擦れの音がした。
素顔を隠さずに晒している慶くんが私の体を押しやりつつこちらを向いた。
アゴ髭が偉ぶってるみたいでかわいいな、なんてまともに聞かれたら逆鱗に触れそうなことを考えて私はまじまじと慶くんの顔を眺めた。
だって最近忙しいし顔を隠していることが多いから。
じいっと見ているとうっすらと慶くんの顔が赤く染まる。
それを物珍しく見ていると、慶くんの手が私の頭をそっと撫でた。
「……俺は、お前の方がかわいいと思うが」
「え!?」
不意打ちの言葉に私の顔も赤くなる。
互いに赤い顔のまま見合わせて……そっと視線を逸らした。
「あ、ありがとう……」
「いや。本心だからな……」
(相慕う)
――――――――――
「……ねぇ、そろそろ入っていいかな。ここ執務室だって二人とも自覚ある?」
「わぁあ!?」
「っ! ……リンドウ」
「怒らないでよ慶くん。だって私が悪いわけじゃないんだからさ」
「ぐ……!」
「あーもーあてられて嫌になるよ」
2012/8/11