遙か夢弐

□観賞用ではなくて
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綺麗な顔だなと思う。





銀色の髪も艶やかでさらさらだし、何気に筋肉がついてるところも素敵だなと思う。





「……俺の顔を見てないで、早く手を動かせ」





こちらをちらりとも見ないまま吐き出された言葉に私ははっとした。





「……気づいてたの?」






「そんなに注視されて気づかない方がどうかしてる」





「むぅ…」






言ってくれればすぐにやめたのに……。





「大体、お前が調べ物をしたいと言いだしたんだろう」




そりゃそうなんだけどさ。






「…ゆきちゃんに対するのとえらい態度が違わない?」






「彼女とお前を一緒にするな」






にべもなく言い捨てられて私は余計にむっと口をとがらせた。






「なんだよー、冷たいぞ。さては一刻も早くゆきちゃんのとこに戻りたいんだな?」






「なんだ、嫉妬か?」






「ば…! だ、誰が……っ!」










「…ゆきには他のやつがついてる。もう、俺がいなくても大丈夫だ」




「……」




動じることなく本から視線を上げることなく淡々と放たれた言葉に私の方がしゅんとした。






なんて言葉をかけるか迷い、瞬の横顔を見つめ続ける。




端正な横顔。




ともすれば冷たく見える顔。







「……瞬って彫刻品みたい。綺麗で、羨ましい」





率直な言葉だった。




別に慰めようとかそんな風に思ったわけじゃない。



ぴたりと瞬の動きが止まった。







ゆっくりと本から視線を上げて私の眼と合わせる。




ああ、真正面から見てもやっぱり綺麗だ。





「……彫刻品ではないと試してみるか?」




「へ?」




試すって何を?





そう思った瞬間瞬の顔が間近に迫って唇が合わさった。







「……っ!」





逃げようとするのに首の後ろを手で押さえられてそれもままならない。





ただただ口内を蹂躙する舌の動きに疼く体を抑えるので精いっぱいだった。






「……はぁっ」




くたりと瞬の体に身を預けて息を整える。




冷たいと思ったら突然濃度の高いスキンシップを図るんだから……!






「甘いな」






くすりと耳元で笑う声がして、顔にかっと熱が集まるのを感じた。






何か文句を言ってやろうと瞬を見ると……瞬が幸せそうに微笑んで私を見下ろしていた。
いつの間にか背中に回された大きな手のひらが温かい。









「……寂しくも悲しくもない。ゆきがいなくても、俺にはお前がいる。俺が好きなのは、お前だ」





「……っ!」







素直な瞬は最強。





――――――――――――




「…どうかしたのか?」



「…うるさい(わかってるくせに)」




「可愛いな、お前は」





「……っ!」






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