遙か夢弐

□迷惑なのは
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ぎゅうっと抱き着いたら彼はものすごく嫌そうな顔をした。





「邪魔なんだけど」




「離れないからね!?」






「なんで私に抱き着くの。龍馬に抱き着けばいいじゃない」





「な……!? できるわけないじゃない!! そんな恥ずかしいっ」





 私の言葉に小松さんはさらに嫌そうな顔をしたけれど、でも押しのけるような真似はしなかった。こういうところは徹底して紳士だなぁ、と思う。





「私に抱き着くのは恥ずかしくない、と。普通逆じゃないの? というかそもそもこんなにべてべたする女性がいないか」




「褒めてくれてありがとう!」




「褒めてない。大体なんだって抱き着くの?」





 心底迷惑そうに言われて私は言葉につまった。







 理由を言えば余計にバカにされそうだけども。





「……龍馬に」




「なに?」




「龍馬に嫉妬してほしいな、なんて思って…」




「……」




「あ、いま呆れたでしょ? けっこう切実なんだから!」




「何がどういう風に切実なんだい?」





「だって龍馬ってばゆきにも都にも私にも同じ態度なんだもの。恋仲って感じしなくって」





「それでこれ?」





「うん。小松さんならいいかな、と思って」





「何をどう考えれば私ならいいになるんだろうね」






「瞬は問答無用で引きはがされるでしょ? チナミは顔真っ赤にしてお説教されるだろうし、総司は淡々と邪魔ですって言うだろうし、桜智さんはゆきにしか興味ないし、アーネストだと普通に抱き返されてエスコートされちゃいそうだし!」






「……高杉は」





「抱き着けるかどうかわからなかったので却下です」





「……子猫にでもなつかれた気分だね」





「そう?」





「そもそもね、君、龍馬がいないところで私に抱き着いても一緒だと思うよ?」






「予行練習?」





「わけがわからない。それに私よりもっといい人がいるよ」





「え? だれだれ?」




「耳貸してごらん」




「うん!」


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