遙か夢弐

□余計なお世話
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「今日もお勤めお疲れ様です、景時さん」






「ありがと。君が作ってくれたご飯を食べるために、オレ毎日頑張ってる気がするな〜」





「そんな……でもそういう風に言っていただけると、嬉しいです」






はにかみながら名無しさんはふわりと笑った。







控えめながらもよく気が付く、自分にはもったいないくらいのお嫁さんだ、と思いながら景時は膳に並べられたご飯を勢いよく平らげていった。







「うん、今日も美味しいよ!」



「ありがとうございます」




にこりと笑う顔がかわいい。
彼女を大事にしたいといつだって思ってる。
やっと手に入れた幸せを、大切にするつもりの景時はしかるべき時が来るまで彼女に触れまいと心に決めていた。





「景時!」




「あれ、どうしたの、白龍?」




「白龍も食べますか?」





満面の笑顔で飛び込んできた小さな龍に二人とも笑顔を向けた。



けれども白龍は順調に少なくなっていた膳に一人こっくりと頷いた。




「白龍?」




「景時、いっぱい食べてる」




「ああ。美味しいからね〜」




「もっと食べて、名無しさんと仲良くなって! 神子たちが望んでるよ」





「仲良くって……」





その言いように気恥ずかしくなって言い返そうとした景時を、違和感が襲った。










……体が熱い?













「白龍、私と景時さんは今でも仲が良いですよ」






おっとりと返した名無しさんの言葉に白龍はことりと首を傾げた。





「でも……将臣が、もっと仲良くなるなら盛るしかないって」




「も、もる? 何をだい?」




なんとなく嫌な予感を感じながら景時は白龍に尋ねた。





「ええと、弁慶が渡してくれた「せーりょくざい」を盛るしかないだろって言っていたよ。それで、二人はもっと仲良くなれる?」





「せーりょく、」




「……ざい」










精力剤、だって!?







青ざめた景時と真っ赤になった名無しさんをきょとんとした顔で見つめた白龍に、景時は裏返った声で尋ねた。






「はははは、白龍!? どの料理に入れたんだい!?」





「ん、全部?」






くらりと眩暈を感じた。






ぜんぶ……全部!?






景時は青ざめたまま徐々に熱を孕む体から逃避したい気分に駆られつつ自分の膳を見た。
……ほぼ食べつくされた膳を。






「っと、白龍回収!」






「将臣!」








ひょいっと小さな白龍を抱え上げた人物に景時は抗議の声をあげた。








「将臣くん!? なんて入れ知恵をしたの!?」








「あー、まあ怒るなよ。人払いはしてやるからさ」







「そんな問題じゃ……!」







「じゃあな! 励めよ、二人とも。まだまだ若いんだからさ!」






笑顔だけはさわやかに、下品なことを言い置いて将臣はぱたりと障子を閉めた。



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