遙か夢弐
□かわいい子……
1ページ/8ページ
「天海さま」
「どうしたんです? かわいい子……」
「……いいえ、なんでもないんです」
にこりと笑って、私は彼の隣に寄り添った。
体温のない、実体のない、天海さま。
倒れていた私をなぜか拾ってくれた天海さま。
感謝はいつしか恋心に変わっていた。
「おかしな子ですね……名無しさん、今日はましろ達と外に行ったのでしょう? どんなものを見てきたのか、どんなことを感じたのか……聞かせてくれますか?」
「はい。天海さま」
おそばにいれるだけで幸せ。
そう思っていた。
たとえ触れることが敵わなくても。
.