遙か夢弐
□恋愛対象外の恋
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一目見て、衝撃が走った。
何がどうと言えるほど何か特別なことがあったわけじゃない。
ただ、心惹かれた。
強く、惹かれた。
「名無しさん」
「高杉さん? 珍しい…お久しぶりです」
にこりと笑いかけるその笑顔に不覚にも顔が熱くなった。
「…」
「高杉さん? どうかした?」
「! あ、ああ…何もない。久し振り、だな」
この俺が…女と喋るだけでこんなにも動揺するなんて……。
「あ」
「!」
ぐっと彼女が俺に顔を寄せた。
一気に縮まった距離にどきりとする。
けれども彼女はなんともない様子で俺の髪に触れた。
髪に神経などないはずなのに、全ての神経がそこに集まったかのようだ…。
「ごみがついてたの。もう大丈夫」
「……かたじけない」
「いーえ」
俺がどれほど思おうとも、彼女は俺を見てはいない。
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