遙か夢弐

□互い、気づかず
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会いたいと思ってた。


見てみたい。喋ってみたい。接してみたい。


でも……やっぱりどうあがいてもここは私の世界じゃない。私のいるべきところじゃない。


……いつになったら帰れるんだろう?










「わ……っ!」



突然きらびやかな布を頭からかぶせられて、私は驚いてその布を手繰った。



するとくすくすと笑い声が聞こえて、その声に主に気づいて私は声をかけた。




「ヒノエくん?」



「姫君、よく似合っているよ、その着物」



「え?」



手繰ってよく見てみると、それは布じゃなくて着物だった。


薄絹の、とてもきれいな。



「どうしたの、これ?」



「あげるよ。唐から渡ってきたばかりのものだ。この国じゃ、お前が初めて身に着けたんだぜ?」



「そんな……っ! もらえないよ!」



慌てて返そうとするも、ヒノエくんに押し切られる。



「お前のために仕立てたんだ。お前がもらってくれないと、だれが着るって言うんだい?」

「で、も……」

「……そんなに困らないで、姫君。俺はお前に喜んでほしくて持ってきたんだから」

「……あ、りがと……」



顔に熱が上る。
嬉しい……、かもしれない。




「……」



「あ、リズ先生。いいところに。似合ってるだろ?」



「え……っ」



通りかかったリズ先生にヒノエくんが声をかけた。



……褒めて、もらえるかな。



ドキドキしながらリズ先生の言葉を待っていると、彼はふと私を見てそれから視線を逸らした。



「……そんなに華美なものは、お前には似合わないだろう」









「……っ!」




言うだけ言ってさっさと立ち去って行ったリズ先生の背中にヒノエくんは眉間にしわを寄せた。



「……素直じゃないねぇ」



「あ、の……」



褒めてもらえるかも、なんて分不相応な期待をしてしまったからだ。


こんなの、私には似合わないのに。


……望美ちゃんなら褒めてもらえたのかな?
そんな風に考えて泣きたくなった。



「……気にするなよ、あれはリズ先生がふてくされただけさ」



「……気にして、ないよ。ありがと」



「男はね、好きな女を着飾るのは自分だけでありたい存在なんだよ」



「え……?」



にこりと笑ったヒノエくんに首を傾げると、なぜか頭をふわりと撫でられた。



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