遙か夢弐
□素直は美徳なれど
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「どこに行くの」
警護のために外に出ようとすると、小松様に引き留められた。
「外で警護をします。小松様は眠られるなりお仕事をされるなり、どうぞご自由に。邪魔はいたしません」
「ダメに決まってるでしょ」
「え?」
呆れたようにため息をつかれて私は首を傾げた。
何がダメに決まっているんだろう?
「部屋の中にいなさい。夜風は体に悪いからね」
「ですが……」
「護衛は私のいる場所でならどこでも出来るでしょ? 私は女の子を部屋の外で寝かせるような鬼畜ではないんだよ」
「……」
「せめて私が仕事をしている間だけでもここにいなさい。寝るときは部屋に戻っていい」
「……」
お師匠様に頼まれたのは小松様を「守る」ことだ。それに無理をしすぎないように「見張る」こと。
「……わかりました」
なんとなく手のひらの上で転がされているような嫌な気分になりながら私は部屋の中で座った。
……同じ部屋の中に慣れていない人とずっと一緒にいるのは嫌なんだけどな。
そう思っていたんだけど。
しばらくして、私は小松様と同じ空間にいるのが苦痛ではないことに気づいた。
「……」
逆に、どこか穏やかな気持ちになる。
……不思議な人……小松様。
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