遙か夢弐

□愛し君
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「……どうしてそんなに膨れてるの?」






そう尋ねられても素直に答えられるわけがなくて。




帯刀に背を向けたまま私は膝を抱えて座り込んでいた。



ただでさえ子供みたいな言動なのに、これ以上子供っぽさを強調させないでもいいじゃないかと自分でも思うけれども。でも面と向かう勇気がなくて私は膝を抱えて顔を伏せていた。





「ああ……もしかしてあの箱の中身かい? 恋文だって聞いたけど」





さらりと言われた言葉に、理不尽な怒りがこみ上げた。



帯刀は私の恋人なのに……っ。






「……私は何度も君だけだって言ってきたつもりだったんだけど、まだ足りなかったかな?」







近づいてくる衣擦れの音がして。



ふわりと抱き寄せられて帯刀がなだめるように私の背中をぽんぽんと叩いてくれる。



気づけばぼろぼろ涙がこぼれていて、泣きたくないのにしゃくりあげてしまって。




ひくひくと体を震わせる私を困ったようになだめる帯刀にまた泣きそうになる。







「い、かな……っ」




「なんだい?」



「行かない、で……っ」



「名無しさん……」




「おねが、だから……っ」



行かないで。


傍にいて。


他の女の人を見ないで。



私だけを見て。




「行くわけないでしょ」



呆れたように、嬉しそうに吐き出された言葉に私は腕をのばして帯刀に抱き着いた。



「好き……っ」




「……私は愛してるんだけどね」




「……?」




小さく何かを囁かれた気がして、私は帯刀の顔を涙をためた目で見つめたんだけど、帯刀はゆるく首を横に振った。





「ああ……いいよ。君はそのままで」




「帯刀……?」




「私は君しか見えてないんだよ。心配しなくとも、本当にね」




だから君も私以外を見てはいけないよ。





そんな風に言われて私は再び帯刀の首に腕を回した。





(涙にぬれた瞳が愛しくて)

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