遙か夢弐

□約束
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空が青白く稲光してすごい音で雷が鳴る。
そのたびに私は布団の中で震えた。






「……っ!」

怖い……っ!



いつもならヒノエが傍にいてぎゅっと抱きしめてくれるから平気なのに。



でも今は呼びたくない。呼んじゃいけない。……呼んでも来てくれないかもしれない。





そう思うと名前を呼ぶことが出来ない。




「っ」



また大きな雷が鳴って私は耳を強くふさいで縮こまった。



やっぱりそれでも追いかけてくる雷の音に、我慢していた涙が零れ落ちてきてしまった。




「うー……っ!」



怖い怖い怖い怖い!


雷なんてどっか行ってしまえ!


そう思った次の瞬間、ものすごく近い雷の音が鳴った。




「きゃああああ!」


もうやだ!










「……この頑固者」



「っ!?」



布団の上から抱きしめてくれる感触がして、雷の音の合間を縫って聞こえたその声に、私はのろのろと布団から顔を出した。




「……ひの、えっ!」



「……そんな風に我慢するなよ。そばにいてほしいなら俺の名を呼べって言っただろ?」



泣き笑いのような顔をする赤い髪の青年。


ヒノエは私が雷の光が直接見えないようにして、涙の後をぬぐってくれた。



「お、こってない、の……?」



しゃくりあげながら尋ねるとヒノエはバツの悪そうな顔をした。



「怒ってないよ。大人げなかったと反省してる。……オレのために食材を買い出しに行ってくれてたんだって?」



「ん……でも、ごめんなさい……ちゃんと言ってから行けばよかった」



しゅんを俯いたその時、また雷が光って大きな音を鳴らした。





びくりと体を揺らして耳をふさぐ前に、私の体はヒノエに抱きしめられていて、唇をふさがれてしまっていた。






甘い口づけに雷の存在をしばし忘れて。




「……謝らないで」



「ヒノエ……んっ」



「……雷なんて忘れて……オレに溺れなよ」



優しく抱きしめて熱く見つめられる。








彼の存在がなくてはもう生きていけないかもしれないと思いながら、私は身をゆだねた。

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