遙か夢弐

□ゆらゆらり
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庭に出て月を見上げる。




すると後ろから腕が回された。
振り向かなくてもわかる。



「将臣……」


「何してんだ?」


「月、見てたの」




冴え冴えとした銀色の光が降り注ぐ。
澄んだ、背筋が伸びるような空気。




「私、冬って好き」



「寒いじゃねぇか」



不思議そうにそう言って、私で暖を取ろうかというようにぎゅっと抱きしめる腕に破顔する。




「ふふ。……将臣が抱きしめてくれるから大丈夫」


「……おう」



照れたような返事が返ってきて、将臣のあごが私の頭に乗る。


そんな身長差が男と女の差を示しているようで、なんとなく胸がときめく。


他の男に男女の差を示されても腹が立ちそうなものなのに、愛しいものにそんな風にされたら愛しさだけが募るのはなぜなのだろうか。




「……冬のね、夜の空気が好き。匂いじゃないんだけど、背筋が伸びるような、そんな空気が好き」



「そうか」



「将臣も好きよ?」



「……別に心配なんてしてねぇよ」



「ふふ。そう?」



「ああ」



拗ねたような声音に笑みをもらすも、私は彼よりもずっと自分の方が不安なのだとわかっていた。



彼が時折名前を出す、幼馴染の名前。



「……ねぇ」



「どうした?」



「……ずっと、ずっと、私の傍にいてね?」



「名無しさん?」



「約束よ? 私のこと、ずっと好きでいてね?」



約束なんかじゃない。


これは、私の願い。


ずっと傍にいてほしい。
ずっと好きでいてほしい。





「……ずっと、私から離れないで……んぅっ」



突然奪うように口づけられて私は目を見開いた。


でもすぐにその口づけの甘さに酔う。


最初は荒々しく。しばらくすると味わうように深くなる口づけ。



彼しか知らない。彼しかいらない。




「……はぁ……将臣……」




やっと離れた唇に吐息をもらすと、将臣は私の眼を真っ向からにらみつけた。




「俺が信じられないか?」




「……ううん」



そうじゃない。




「信じてるわ」




でも、でも……人の心は移ろいやすいから。
だから……彼女と夢逢瀬しているのでしょう?



再び現世で出会えば、二人がどうなるかなんてわからないでしょう?





「好きよ。大好き」




愛してるの。





そうつぶやいた私の唇に将臣は再び食らいついた。




ああ……この甘いひと時が、ずっと続けばいいのに。



そんな風に思っても、その時私が感じた不安はやっぱり当たってしまうのだった。





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