遙か夢弐
□気持ちの行方
2ページ/8ページ
「……」
「ん! これもおいしいです、景時さん」
「ほんと? よかったね」
「はい! 一口いりますか?」
「もらっていいの?」
「はい。どうぞ」
一口だけスプーンにすくって差し出すと、景時さんは頬を赤く染めて、でも私が引かないことを悟るとおとなしく口を開けてくれた。
よし! あーん、成功!
一人満足しながら「おいしいですか?」と尋ねると「おいしいよ」と返してくれる。それにうなづきながら私はもう一口食べる。もちろん、そのスプーンで。
よぉし! 間接キスも成功!
……ってなんだか変態みたいだなぁ。でもなんだか幸せだからいっか!
一人うきうきしながらかき氷を食べていると、うろんな目をした九郎さんと目があった。
「……名無しさんは」
「え? どうかした、九郎さん?」
「兄離れのできん妹のようだな」
「えー……」
今のこのやりとりを見てそう言える九郎さんがすごいと思う。
そう言おうとした瞬間、私の隣で景時さんが声をあげた。
「たしかにね〜。妹が一人増えたみたいだよ」
「っ」
思わずスプーンを取り落しそうになった。
眼中にないと声高に言われた気分だった。
わかってたはずなのに……どうしてこんなにショックなんだろうか。
.