遙か夢弐
□夢か現か
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「市に行こうぜ」
戸惑う私の手を引いて、将臣さんは市場へと繰り出した。
物珍しさにきょろきょろする私に、将臣さんがいろいろと説明してくれる。
少し疲れたな、と思った頃、将臣さんは私とともに茶屋に入った。
「生活には慣れたか、名無しさん?」
「ええ。少しずつですけど」
でも…同じ日本とはいえまったく違う生活様式に最初どうしていいのか本当に戸惑った。
なんでここにいるのか、どうしてこんな生活をしなければならないのかわからなくて…どうしようもなくて。
でもそんな私を支えてくれたのは同じ境遇だというこの男だった。
わからなくてパニックになりそうになれば教えてくれ、暗く沈みそうになればこうして連れ出してくれる。
その気遣いは同郷の人間を気遣うものだと知りながらも私は…。
(だって、すごくイケメンなんだもん……)
最初は目の保養、と思っていた。
そう思わなければ引力のように惹かれていく自分の心を止めることが出来ないとわかっていたから。
でも、今は。
(……ダメ、なのに)
心細いだけだ。
手近な異性を求めているだけだ。
誰かに自分を必要として欲しいだけだ。
わかっている。
それなのに……!
(好きかもしれない、と思い始めてる時点でもう好きなんだろう……)
浅ましい私の心……
どうかこの優しい人に気づかれないで。
感情さえ捨て去りたいの
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