遙か夢弐
□夢か現か
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「よ。具合はどうだ?」
「将臣さん…」
ここが自分の生きていた世界でも時代でもなく、源平合戦の時代に来てしまったのだと聞いて、私は倒れてしまった。
人間、なかなか何があっても倒れないと思っていたのに精神的に限界が来たら倒れてしまうのだな、なんて自分で自分の状態を自己分析して笑えてしまった。
「もう大丈夫です。皆さん、優しいので大事をとって休んでいるように言ってくれてるだけですから」
「そっか」
本当に…ここはあの平家なのだろうか?
こんな得体の知れない女を屋敷に迎え入れ看病してくれるなど。
「…私がよくしていただいているのはあなたのおかげでもあるんです、将臣さん」
布団の中から出て、私は正座をして畳に指をついた。
「…ありがとうございます」
「礼なんて言うなよ。俺が勝手にやったことだしよ」
照れたように頭をかいた彼は、すぐに表情を真剣なものにした。
「自分と、かぶっただけだしな」
「…」
平家の亡き将・平重盛殿と瓜二つだというこの有川将臣は、自分と同じ現代からやってきたのだという。けれども還内府としてこの平家を率いている彼の口添えで、私はこの屋敷に置いてもらえることになった。
「…それでも」
ありがとうございます、と言いたい。
あなたがいなければ私はきっともうこの世のものではなかったから。
まぎれもなく、これが現実
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