遙か夢弐

□夢か現か
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自分に向かって振り下ろされる銀色のきらめきに、私は死を覚悟した。
けど。



「……?」



覚悟していた痛みがなく、そろりと目を開けると……広い広い、大きな背中があった。



(誰……?)



「よせ、知盛! 丸腰の女だろうが!?」


「……なんだ、重盛兄上か……ふん……屋敷の裏でこそこそと…そんな女を斬ろうとして、何が悪いんだ…?」


「見境がないんだよ、お前は! 敵かどうかぐらいわかるだろうが!」


互いに顔見知りのようで、知盛と呼ばれた方も重盛と呼ばれた方も鎧と剣をたずさえている。


…まるで、戦に向かう将のようだ。


綺麗だけれど自分を殺そうとした冷たい瞳の「知盛」という男に怯えていると、もう一人の男がふとこちらを振り返った。


「…お前、なんだってこんなとこに…それにその恰好は」



「…?」


痛ましいものでも見るようなその視線に私は自分の姿を見直す。

なんてことはない。

ワンピースを着ているだけだ。




「その姿は…襲ってくれ、と言っているようなものだな」



呆れたように言葉を吐き出す「知盛」に私が声を上げるよりも先に、「重盛」が声を上げた。


「バカ! こいつにはいたって普通の格好だよ…」

そしてもう一度悲しげな顔で私を見ると、その人は呟いた。



「現代から、来たんだな」




その言葉の意味を私が知るのはもう少し後の話。







夢なら覚めて。

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