乙女ゲーム夢2
□宣戦布告と再会
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土方さんの記憶が戻って、その嬉しさを桜に伝えるように校庭の桜の花を見上げていると足音が聞こえてきた。
土方さんかな、と振り向いた私の目の前に制服姿の男性が現れて。
「え……」
「久しいな」
笑みを含んだ、無表情ではないその人に鮮やかに記憶がよみがえる。
私を愛し、大切にしてくれた人。
「斎藤さん…」
「その姿…まさか教員か?」
「あ、うん…。今年から薄桜高校で教えることになって」
「俺の方が年下か・・・・・・なおのこと分が悪いな」
はぁ、と重々しくため息を吐き出す斎藤さんに不思議な気分になる。
「1年?」
「2年だ」
よどみなく会話が続く。
まるで、離れていた期間などなかったかのように。
「今度こそ正々堂々と勝負がしたい、と。彼岸でお会いした時に告げました。勝負は、これからです」
私に言っているのかな、と思ったんだけど斎藤さんは言い終わったと同時に後ろを振り向いた。その場には、顰め面の土方さんが。
「覚えてるよ。お前、死んで早々宣戦布告しに来ただろ」
ひょい、と肩を竦めて面白そうに笑う土方さん。
まるで・・・・・・服さえ違えば、昔のよう。
あの、新選組として屯所で過ごしていたときのよう。
「だが・・・・・・再び会えて、よかったな」
慈しむような優しい笑みとともに頭を撫でられて、その言葉の意味するとことに気づき、涙がこみ上げた。
――――土方さんと再会できてよかった、と言ってくれる優しい人。
「おい、触るな。俺のだ」
「・・・・・・」
「なんだ、その目は」
「いずれ俺のものにします」
「な…!」
「そうなりたくなければ、絶対に傍を離れず、手を離さず、守ってください」
「・・・・・・肝に命じとくよ」
(宣戦布告と再会)
2014/04/05