乙女ゲーム夢2

□愛しているのは
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「ひさしぶり、ラウル」

「名無しさん!? どうしてここに……」









驚いた顔をするラウルに私は頬をふくらませてみせた。


「ラウルが婚約者の私をいつも放ったらかしにしているんじゃないかって、フィリップ様が気遣って下さったのよ。当分の間ここに滞在させてもらうつもりだけど……ご不満?」


「不満なんて! ただ僕に何も言ってくれないから驚いたんだよ」


そつなく笑みを浮かべた子爵様に私も笑みを浮かべた。


「驚かせようと思ってフィリップ様にも黙っていてくれるように頼んだの。成功ね」



「驚かせようとって……僕はいつも君に驚かされているような気がするよ」


苦笑しながら私をエスコートするために腕を差し出してくれるラウルの王子様っぷりに、私はさらに笑みを深めた。









どこにでもいる貴族の令嬢だったら、意識に残らないでしょう?

だから私は、形だけの婚約者にならないように出来るだけの努力をするの。

貴方は昔の初恋の少女にいまだに心を縛られているけれど、私は貴方に心を縛られてしまったから。

貴方は最低限のマナーで私を婚約者として大切にしてくれる。

そしてただ一人の人間として信頼してくれている。





そこに……ひとかけらでもいいの。


「愛」が欲しい……。





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