乙女ゲーム夢2
□別人みたいな
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返答を待たずに言うだけ言って部屋を辞した兄に、ラウルは呆れた顔をした。
「人の話、まったく聞いてないな、あれ……」
しかし自分の知っている兄とは違う姿に口元がゆるむ。
「余裕ないなぁ」
だがそれほど大切にしたいと、夢中になれる相手に巡り合えたことは兄にとってこれ以上ないほどの幸福だ。
「そろそろ姉さんって呼ばないといかなくなるかもね」
ひどく冷静に、ひどく冷たく、家のことだけを考えていた兄ではない。
一人の男として余裕なく女性を愛する兄。
いつだって兄のことを尊敬していた。
だが今の兄の方が人間味があってとっつきやすい。
「幸せになってほしいな」
願わくば自分もそんな相手に巡り合えることを祈って。
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