乙女ゲーム夢2

□互い不安
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シャワー室から聞こえる水の音を聞きながら、私はぼうっと彼の背中を眺めていた。





広くて、綺麗な背中。




ほどよくしなやかな筋肉がついていて、ギリシャ彫刻のようなレン。






……それにしてもどうして自室のシャワールームが外から中が見えるような仕様になっているんだろう。






ラブホみたい……いやいやこれが上流階級の在り方?







うーん、と悩みつつ「一緒に入ろうか」と聞かれて全力で断ったのにレンの入浴シーンが完全に見えてるということは私の入浴シーンもばっちり見えてるってことだよね、と頭を悩ませた。







「……」







体にも、そんなに自信があるわけじゃないし……。




ダイエット、しよう。




でも身長はどうにもならないよね……。












胸にささった棘がちくりちくりと痛む。








あの綺麗な体を何人の女性が抱きしめ、抱きしめられてきたんだろう。





そう考えて嫉妬で狂いそうになった。











あの声で何人の名前を呼んだの?





私を抱く激しさで何人の人を愛したの?




好きになれば好きになるほど不安が増す。









……レンが、好きすぎて。













「お待たせ、ハニー」






「あ、うん。……っ!」







腰にタオルを巻いただけで出てきたレンに目のやり場に困った。






「ぅ、ぁ……あの」







「……名無しさん」








レンがぺたぺたと歩み寄ってきて、視線を逸らす私をそっとベッドに押し倒した。










「……一緒にシャワーを浴びないってことは、あとでシャワーを浴びるってことだよね?」








「え!?」












色気たっぷりの笑みを浮かべられて戸惑っていたらレンが耳元で囁いた。










「……ドレス姿に最初からずっと欲情してたんだ。知ってたかい?」










「そ、んな、の……しらな……っ」









レンの濡れた髪からぽたりぽたりと冷たい雫が落ちてくる。






首筋を這う熱い唇と体を這う熱いてのひら。








「ぁ……」








胸を揉みし抱くてのひらの動きに腰がうずくのを感じながら、胸はそこそこあってよかった、なんて考える。











……私と付き合ってからは私だけしか抱いてないの?







それとも他の誰かとも?








そんなこと考えるのは最低だと思いつつ不安がいや増す。










レンの愛撫が気が遠くなるほどに気持ちいのもその要因の一つだった。














「んっ」









スカートをたぐって太ももを撫でる湿ったてのひら。





ドキドキしながら翻弄されていると、ふとレンが顔を上げた。









手を絡め取られてベッドに縫い付けられて、真正面からレンの真剣な目が私を見下ろす。













「……いけない子だ。何を考えているんだい?」










「……っ! な、にも……」







「嘘だね。俺に抱かれながら、他のことに気を取られているなんて、許せないな」











ぺろりと顎を舐められて、体がぴくんと震える。










「君に関して、オレは「不安にさせてごめん」なんて殊勝な言葉は吐かないよ。名無しさん、オレは君に不満があるなら言ってほしい。オレが君を全力で求めているのと同じように、君にも全力でオレを求めてほしい」










「レン……」










「……君が「友達」と呼んでいる奴らと仲良くしているのに、どれほどオレが嫉妬してるか知ってる?」







「え?」








絡んでいた手を解かれて、右手がそっと持ち上げられる。









何かの誓いの様に、何かを縋るように手首の内側に唇を這わされて。








その切なげな瞳に私はどきりと胸を鳴らした。












「……不安なのは、オレも一緒だよ。いっそ君をオレだけの鳥かごに閉じ込めたいほどに、オレは君を愛してる。好きで好きでたまらない。君と同じ空気を吸っていると思うだけで泣きたくなるほど感動するくらいに、君を……愛している」












じわりと涙で視界がにじんだ。









……これほどまでに愛されているというのに、私はどうして自分勝手にも不安を感じてたんだろう。














「レン……っ」










手を伸ばしてレンの首に抱き着く。









「レン、レン……っ」












「可愛い俺だけの、お姫様……」










どうしたら私が彼を好きだと伝わるんだろう。





そう思いながら、私はレンの頬を両手で包んだ。





不安げに揺れる瞳に、ああ、好きだな、と思いそっと口づけた。







「……っ!」





「ん…」





最初は軽く。






徐々に、レンがしてくれるように深く口づける。






上手には出来なくても、愛が伝わればいいと思って。
















「は……っ」










荒く息をつきながら唇を離すと、レンは真っ赤な顔をして呆然と私を見つめていた。








「……え、と」








そう何も反応がないと逆に困る……。










「嫌、だった…?」









しゅんとしながら尋ねると、レンはぎこちなく首を横に振って、口元を覆った。








「参った……」







「え?」











「……オレのこと、好きだって……キスで伝わってきたよ」











「よかった……」












「……君からオレを求めてくれることが、こんなに嬉しいなんてな」










くしゃりと自分の髪をかきあげて照れるレンを珍しく思いつつ、私はにこりと微笑んだ。














「私、強くなるね」












「うん?」











「レンの隣にいてもおかしくないぐらい、レンの愛情を疑うことがないくらい」











誰に何を言われても揺れないように。














慰めてもらうことを求めるんじゃなくて、自分に自信を持てるように。










「……愛してる、レン」







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