乙女ゲーム夢2

□互い不安
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「お願いがあるんだ、ハニー」

困った顔でレンに頼まれて私はこくりと頷いた。












知り合いのパーティーに行くのにパートナーが必要なんだ。









そう言われて、迷いなく恋人である私のところに来てくれたのはすごく嬉しかった。






レンに全身プロデュースされて、別人みたい、なんて思いながら控えめな笑顔を浮かべてレンの隣に立つ。





……きらびやかな世界。


レンは、こんな世界で生きてるんだ。



そう思ってなんとなく切ない気分になった。




着飾ってやっとこの場に立ててる自分と、いつだってこのきらびやかな世界で生きていけるレン。




……普段の私とは、まったく似合わない。





そう思ったら……なんだか泣きたくなった。













「疲れたろう?」





「あ……ううん」






気遣わしげに問われて、ぷるぷると首を横に振るとレンが微かに微笑んで私を窓際までエスコートしてくれた。







「ここの椅子に座っていて。飲み物と食べ物を持ってきてあげるよ」






「え!? い、いいよ、私も……」






「すぐ戻るから」







ふわりと頭を撫でられて、ここに一人残されるのが心細いのだと見透かされた気分になった。






なんとなく気恥ずかしいような、嬉しいような気分になっているとレンは人ごみへとまぎれた。







完全に見えなくなるまでその広い背中を見つめ続け、私は小さくため息を吐き出した。













レンが好き。




ここに残されるのが心細いことも、そろそろ足が限界だったことも両方気づいたうえで気遣ってくれるレンが好き。





帰ろう、と言わないのは彼があいさつしないといけない人がまだ数人残ってるから。






気遣わせてしまったことを少し後悔しながら、私は早く帰ってこないかなと頭を巡らせた。














「…―――――ね」







「……っ」





ふと聞こえた、声。



気づくとひそひそとあちこちで何か言われていることに気づいた。



どうしてひそひそ話というのは聞こえやすいのだろうか。





どきんどきんと心臓が大きな音を立てる。






……気持ち悪い。













―――神宮寺さんの隣にあんな子似合わないわ。




―――スタイルだってそんなによくないくせに。





―――私のときだってあんな風にエスコートしてくれたわ。





―――今日限りのパートナーじゃないの?





―――最近デートしてくれないの。







―――あら私はこの間……。







「……っ」















「やぁ、お待たせ」






「あ……」






逃げ出そうかと立ち上がったんだけど、レンが飲み物と食べ物を持ってきてくれた。






「……あり、がとう」






あ、よかった……笑える。






「美味しそう! お腹減ってたの」






「そう? 好きそうなものを取ってきたんだ。味も申し分ないと思うよ。さぁ、どうぞ」







お皿とフォークを渡されて、私は彩り鮮やかなプレートに笑みを作った。







でも口に入れてもどんな味なのか、美味しいのかなんなのか、そもそも味があるのかどうかわからなくて。






でも美味しそうに食べなくちゃ。




レンにこれ以上の心配をかけられない。






気づかれちゃダメ。




――――ううん、違う。




レンに嫌われたくない。






本当に今日限りかもしれないなんて疑心が芽生えてるだなんてばれたくない。






誰かと最近デートしたの? なんて醜く問いかけたくない。






今までの女性遍歴はなんとも言えないわかってる。







でも……。







「美味しい、レン。ありがとう」






「喜んでもらえてよかった」









ふわりと微笑むその笑顔を他の誰にでも向けているだなんて考えたくないの……っ。





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