乙女ゲーム夢2

□気づくこと
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「なんだか嬉しそうですね」




「え?」





二人肩を並べて寮までの道のりを歩いているとトキヤくんが突然そう言った。





驚いて彼を見ると、トキヤくんは少しだけ微笑んで私を見下ろしていて、ずっと横顔を見られていたのかと気づいてなんだか恥ずかしくなってしまった。











「う、嬉しそうに見えた?」



「ええ。とても。何か特別いいことでもあったなら、私にも教えてほしいのですが」




「……他人のいいことなんて聞いても自分は楽しくないんじゃないの?」





窺うように尋ねてもトキヤくんの微笑みは崩れない。それどころかいっそう笑みを深めて首を横に振る。






「あなたのことですから、なんでも知りたいと思います。嫌でなければ教えてください」




「……っ」






さらりと言われた言葉にかっと頬が熱くなった。





この人はどうしてこう…照れることをさらっと言うんだろうか。





どこか負けたような気分になりながら、私は私が話すのを待ってるトキヤくんを見上げた。











「た、大したことじゃないの。いつも一人で帰るなら音楽聞いてるからこんな風に虫の鳴いてる音とか葉擦れの音が聞こえてなかったなって思って……それが聞こえたら春の匂いが濃くなるな、なんて……思ってたら顔が緩んでたみたいです……」






う、うわ…考えてるだけなら無害だけど口に出して他の人に伝えたとたんに陳腐に聞こえてきた……!






自分が思うだけで満足してたらよかった……!







羞恥心で憤死しそうになりながらちらりとトキヤくんを見ると彼はすごーく驚いていた。
ええ、いきなり変なこと言いだしたらそりゃ驚くよね!







「わ、忘れて…」



「…なぜですか?」



「変なこと言ったから…」





うぅ、顔が熱い……。





「変ではないでしょう。私は、君のその感覚を愛しく思いましたよ」





「へぇ!?」




驚いて顔をあげると、トキヤくんがとても愛しげな視線を私に向けていたのでさらに顔が熱くなった。





「口には出さないし、自覚もあんまりないんですが、季節は確かに私たちの五感に訴えてくるものがある。それを感じ取ることのできる君に愛しさを感じました」







「〜〜〜〜〜っ」








惚れた弱み、とか。




そういうのだよって言ってあげたいけどきっとトキヤくんは淡々と否定してくるんだろうと思って余計に恥ずかしくなるからやめようと思った。






「名無しさん? どうしたんですか、突然早足になって」





羞恥心がMaxになって足早に歩き出すもトキヤくんはもともと私に歩調を合わせてくれてたんであって、足も長いからやすやすと追いついてくる。









それでも今は顔を見られるのは勘弁!








―――――――――













「名無しさん? どうしてこっちを見ないんですか?」





「ほ、ほっといてくれると嬉しいんだけど……」





「照れたんですか?」




「……っ!?」







「…君は一々可愛い人ですね」








end

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