乙女ゲーム夢2

□ほのぼのと
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「う、わ……」





――…飲みすぎた。





立ち上がった時に少し足下がふらりとしたけど、そのまま宴会場を出た。












社員旅行って嫌いじゃないんだけど、顔色が変わらないのをいいことにみんなすごい飲ませるんだもんなぁ……。





ふらふらと中庭に出ようとして、私はぐらりと足下を崩した。






「……っ!」




「危ない!」







「……あれ?」








「あれ、じゃないでしょ。何してるの?」





呆れたように言われて、私はそこで初めて一条さんに半ば抱きかかえられた状態であることに気づいた。





「うわ! えーと……ありがとうございます?」




「なんで疑問形……ほら、しっかり立って」





たしなめられてやっとこさ顔を上げると、間近に一条さんの顔が……?





「一条、さん?」






「うん? そうだけど、どうかした? もしかして、吐きそう?」





心配そうに尋ねられて私は小さく首を横に振った。





「いえ……前髪、降ろしてたら若いなって思って……」







酒が入っているものだから直球でしか物が言えなくて、思ったままを伝えると一条さんが微妙な顔をした。






「若いって……いつも何歳ぐらいに見えてたの?」






「いえ、年相応なんですけど……今だとマイナス3歳くらいには見えますよ?」





「……ここはお礼を言うべきところだろうか?」





「あは。有難く受け取ってください」





「そうするよ。ところで、あそこのベンチまで歩ける?」





「えーと……」





ベンチベンチ、と視界の中にベンチを探していると一条さんが何故か少しかがんだ。







「一条さ…? ぅ、わ……っ!」





突然体がふわりと浮いて、不安定なような安定感があるようかよく分からない感じで私はどんどん近づいてくるベンチを見て「あ、ベンチ」と呟いた。







「ベンチだよ。……相当酔ってるね」





再び呆れた声が耳元で聞こえて、私はぼうっと一条さんを見た。






「……もしかして、私今お姫様抱っこされました?」






「そう、改めて言われると恥ずかしいんだけどね。ベンチまで運ばせていただきました」






「……ごめんなさい、ありがとうございます」







困ったようなありがたいような複雑な気分でお礼を言うと、一条さんは少し驚いた顔をして私をベンチに降ろした。






「お酒が入るとくだけた口調になるね」





「そう、でしょうか?」






「うん。でもそんなに酔った顔はしてないのに。少し眠そうだけど」






「うーん。顔色、まったくと言っていいほど変わらないんです。酔わないわけじゃないんですけどね」






「じゃあすごく飲まされたんじゃないか?」






心配そうな顔をされて私は苦笑いを返した。







「悪気があるわけじゃないですし……」






まぁいささか飲まされすぎたけど、ちゃんと断りきれなかった私も悪いんだし。




そう思っていると一条さんは微妙な顔をした。





「…変なことされてない、よね? 大丈夫?」





「へ!? まさか! 大丈夫です!」




「そっか。よかった、安心した」




へにゃりと笑われて私はぽかんと一条さんを見上げた。






どうして一条さんが安心するんだろう。コンプライアンスとか?











「……あーその、ね」






「……?」













「君が嫌でなければ、俺と付き合ってほしいんだ。酔ってるときに言うのはずるいと思ってはいるんだけど」







「…………は?」










あれおかしいな、耳が言語を理解しないんだけど。いや曲解するんだけど。




「い、一条さん? 私すごーく酔っているみたいで、あんまり言葉が理解できないって言うか……」





「俺と付き合ってほしい。理解、出来た?」






「……つきあう?」





一条さんと?



じっと見つめる一条さんの瞳の真剣さに、ただでさえ酔いに熱を持っていた頬が熱さを増した。




「……っ」






「……返事、聞かせてもらえる?」
















棚からぼたもち。


―――――

「……よ、よろしくお願いします」




「! よ、よかった! こちらこそよろしく」




ほんとに嬉しそうに笑った一条さんに胸がきゅんとした。




終.
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