乙女ゲーム夢2
□ほのぼのと
1ページ/3ページ
「……」
なんで…なんでよりによってこいつがここにいるの!?
夜も更けようかという時間。
むなしくも残業をしていた私を難関が迎えた。
なんでコピー室にこいつがいるのか。紙しかないのに!
「う、うう…」
いっそ見えなくなってくれればいい。
それはそれで怖いけど。
残業している人が少ない時間、知り合いなんていない時間、いつもなら誰かに助けを求めるのにどうしようもない。
私はコピー室の入口で立ち往生していた。
「このコピー取って少しパソコン叩いたら帰れるのに……っ!」
こんなやつ怖くないと言い聞かせても無理なものは無理!
こんなに小さいやつのどこが怖いのかって言われても無理!
「むり…絶対無理…なんでここに出たのよ……っ!」
ぐだぐだ言っても始まらない。
わかってるけどどうしようもない。
それでも行かないと帰れない。行くしかない、と決意して足を一歩踏み出したその時。
かさり。
音がしたと思って足下を見たらもう一匹。
「……っ!」
一匹いたら十匹いると思え。
そんな言葉が頭の中を駆け抜けた瞬間、私は思う存分叫んで飛びのいていた。
「ぎゃあああ!」
「……ぶはっ!」
「ぅえ……?」
突然聞こえた笑い声に半泣きになりながら振り向くと、そこには当社ナンバー2の人がいた。
「いいいいい一条さん……?」
―――……腹を抱えて大爆笑しながら。
.