乙女ゲーム夢2

□不器用な二人
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「勇さん、起きてください」

小さく揺り動かして耳元で囁く。






すると小さく瞼が動いてそっと開かれた。




ぼんやりとした視線がしばらく天井をさまよって、それから私を捉える。





「おはようございます」





にこりと笑って挨拶をすると、勇さんはほにゃりと笑って「……起きたぞ」と一言つぶやいた。
















彼が可愛らしいのは朝の一瞬だけ。



それ以外は私に向かって冷たい視線を向けてくる。



婚約者だというのに、それは名ばかり。



私は彼の厄介者だった。












「や、また暗い顔してるね」



「茂様……」




「……相談なら乗るよ? それとも、揚羽の方が相談しやすいかな」




ぱちりと片目をつむる茂様にくすっと笑みがこぼれた。




「……茂様はお優しいですね」




「勇兄さんは優しくない?」



「……いえ。優しいですよ」




最低限、女性に対する優しさは持っている。
夜も優しく抱いてくれるし、愛の言葉こそないものの自尊心を損なわない程度には言葉をかけてくれる。




でもそれは、一般的な「女性」に対する彼の精神。根っからの紳士なんだから、仕方ない。ある程度の遊びをしているのも知っている。女を買っていても、私を抱いていても、大して変わらないんだから。






「私が……わがままなんです」





私だけを愛してほしい。




そんな風に思うのは、愛を求めるのは、おかしな話なんだろう。






「私は宮ノ杜勇を支える存在でなければならないのに、その上を望むから」





「……それは普通だと思うけれどね」





「……茂様を、好きになればよかった」





私がそういうと、茂様が焦ったような顔をした。




それを不思議に思う間もなく、ぐいっと腕を引かれて、乱暴に歩かされる。





「え……勇様!?」








まずい、と思うが弁解する間もなく勇様が私の腕をぐいぐい引いて廊下を突き進んでいった。


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