乙女ゲーム夢2
□どデカすぎる愛
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「えっと、さ。神宮寺って名無しさんのことすごい大好きだよな」
少しひきつった笑顔でそう言う音也から私は視線を逸らした。
音也の視線の先には「I LOVE 名無しさん」とのりで細工されてる彩り鮮やかなお弁当箱。というかお重。
なんでもできるレンが作成したこの世に唯一のそれは嬉しいのかなんなのか。
とりあえず友達に指摘されて視線を逸らしたくなる程度には恥ずかしいらしい。
「音也、教科書を部屋に忘れていましたよ。次の授業で使うんでしょ……名無しさん。なんですか、そのお弁当は……」
教科書を届けに来た音也のお母さんが言葉を途切れさせてなんとも言い難い顔をした。
「うん……ほっといて」
それ以上に言い様がなくて私はそっと一番上のお重にふたをした。
食べますよ。
食べますけどね。
隠しながらお弁当を食べたい衝動に駆られたのはこれが初めてかもしれない。
「…嫌なら嫌と言った方がいいですよ?」
どこか気遣わしげに言ってくれたトキヤに私は再び無言を通してお弁当を食べはじめた。
(「今日のお弁当、美味しかったかい?」)
(「……うん。でも、文字はいらない、かな」)
(「え……どこかおかしかったかな?」)
(「……いえ、全然」)
(「そう。オレの気持ちの全てを込めたんだよ」)
(「……う、嬉しい」)
(「オレも喜んでもらえてうれしいよ、レディ」)
にこりと笑ったレンにそれ以上何も言えなくて、次の日からも愛のたっぷり込められたお弁当を持って行くことになった。
(結局どっちもバカップル)
2011/12/31